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十人十色
理解色

僕は誰が好きなんだろう?

最近、僕、彰は、そんなことを考える事が多くなった。
彼女が今すぐ欲しいとかじゃない。ただ、思う。

(タイプはあるけど、誰って聞かれるとなー)

答えられない。

(一目惚れとかもしたことない)

もしかしたらイヴちゃん。って思ったこともあったけど、やっぱり違う気がする。

「はあ」

図書室で本を読むはずだったのに、1ページも進まない。

友達に恋人が出来たからって、焦ってんのかなー?

(元気な子、引っ張ってくれるような明るい・・・・・・)

そんな彼女が傍にいたのなら、どんなに楽しい毎日だろう。

(はあ。これが思春期って奴なのかなー?僕も所詮は男の子だったってことか)

野球一直線だぜ!とか思っていた小学生の頃が懐かしく感じる。

(これ、戻そう)

僕が本を持って、立ち上がろうとした瞬間。
女の子の声。

「あー、あった」

「えっ」

死角から、ピョコンと嬉しそうに近付いてきた少女の正体は良子ちゃんだった。

「そのシリーズ私も読んでいるの。彰君も好きなの?」

「う、うん。まあね」

今日は全然読めなかったけど。

「面白いよねー。彰君は、それ読み終わったの?」

僕は横に首を振る。

「そっかー」

良子ちゃんは残念そうだった。借りたかったのかな?
・・・・・・うん。

「先にどうぞ」

そう言って、僕は良子ちゃんに本を差し出した。

「え、いいの?」

「いいよ。他に読みたい本があるから」

嘘だけど。どっちにしろ、こんな状態で読めるわけないし、ただ持っているよりは読んでもらった方が本も喜ぶだろう。

「ありがとう!」

本当に嬉しそうだな。
良子ちゃんって、本を読まないイメージがあったから何だか意外だ。

(元気で、明るい・・・・・・)

喉に魚の小骨が詰まったような引っ掛かりを覚える。

(なんだろう?)

あれ。僕が考えていたのは?

(理想の、好きな・・・・・・・・・・・・えっ)

理解。そして、絶叫。

(ええええええええええええええええええええええ!?!?)

見付けた。あんまり身近にいるから気付けなかった。
鈍い。鈍いよ僕。
とりあえず、落ち着こう。まだはっきりと決まったわけじゃないし。

(で、でも)

良子ちゃんって可愛いんだな。なんだか小犬のような愛らしさが・・・・・・って、僕の馬鹿。なんて不純!そんな目で見るなんて!?

心音が加速、高まっていく。

「じゃ、じゃあ」

これ以上耐え切れず、僕は走って図書室から出て行く。

「また教室でね〜」

(ああ、僕って、本当に)

せめて午後の授業が始まるまで、顔が元に戻っていますように。

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