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幻想世界
模擬戦闘開始!!(B)

「これより、模擬戦闘を開始する!ルールは前の授業で説明した通りだ。なお、模擬とは言葉だけだ!リーンの盾が有る限りお前達は死なん!相手を殺す気で挑め!!」

「「「はい!!」」」

魔法戦闘担当教師、エルヒィード・モルデスは元軍人である。階級は不明。何故教師をしているのかも不明。
怖いもの知らずの生徒会長が、以前聞いた事があるのだが、

『・・・・・・それにはまず、この傷の説明からしないといけない』

と、右目から頬にかけてある、見るのも痛々しい斬り傷を指されたので、さすがに止めたらしい。
とにかく、厳しい先生で、容赦のカケラも無い。

ゆえに、『鬼教師』と生徒内で恐れられている。

「組み合わせは今から決める。出席番号順にくじを引け」

真新しい空のお菓子の箱に、穴を開け、中にくじが入っている。

(((このくじ、先生が自分で作ったのかな?)))

とは、誰も聞けなかった。


〜魔法の強さ。まるわかり表〜


1階位。「(基本の属性)よ(攻撃方法)」

例。「炎よ焦がせ」「風よ切れ」


2階位。「(基本の属性)の(武器の形)よ(攻撃方法)」

例。「炎の槍よ。敵を貫け」「風の刃よ。敵を切り裂け」


3階位。「(色)の(基本の属性)よ。汝は(武器の形)。(攻撃方法)」

例。「紅蓮の炎よ。汝は槍。敵を貫け」
「純白の風よ。汝は刃。敵を切り裂け」



〜後、4と5階位があるが、4学年は3階位までが限界。〜




《5分後。Bステージ》

「それでは、戦闘を開始します。・・・・・・スタート!!」

審判係の生徒のコール。ステージで向かい合った、生徒二人は素早く魔法を紡ぐ。

「炎よ焦がせ!」

「風よ切れ!」

アンの炎の弾丸、ターナの風の刃。空中で激突し、ともに消える。
いち早く動いたのはアン。再度、炎弾を放つ。ターナの詠唱が間に合わない。

「きゃっ!」

ターナは思わず瞼を閉じる。

ドシュッ!!

ターナの頭を焦がそうとした炎弾が、不可視の壁に阻まれ、防がれる。リーンの盾による自動防御だ。

「そこまで!勝者、アン・ラーシエス!」

「ヒルデンド!戦闘中に瞼を閉じるとはどういう事だ!!これが本物の戦争ならお前は死んだ!!ラーシエスは攻撃が単調過ぎる!共にここの外周を20周走ってこい!」

「「は、はいっ!!」」




《Dステージ》

エルヒィードの怒声に、マイヤは身を縮こませた。

「あの子勝ったよね。なのに走らせるなんて」

「さすが、鬼教師ですわ」

アイナスも同意する。エルヒィードは怖いと。

「どうやら、普通に勝つのは駄目らしいな」

Dステージで戦うのはルミナだった。彼女は杖を持たない。代わりに左手の人差し指に指輪型のマジックマテリアルを嵌めている。

「ルミナ頑張ってー」

「まかせろ」

「女なのに、男らしいですわね」

相手は、別クラスの生徒で、しかも、あろうことか、リデーネの隣に座っていた一人だった。

「・・・・・・さっきは、うちのマイヤが世話になったな」

「くすくす。世話だなんて、本当の事を言っただけでしょう?」

「あ、あのー。双方準備は良いですかー?」

戦う前から一触即発の空気に、審判は怯えていた。

「いつでもどうぞ」

「こちらも良いです」

「そ、それでは、戦闘を開始します。スタート!!」

コール。先に動いたのは相手。杖を真っ直ぐルミナに向ける。

「水の刃よ。敵を切り裂け!」

虚空で交差し、十字になる水流。
魔力による圧縮。研磨。研ぎ澄まされた刃になる!

「始めから2階位の魔法!?しかも、発動が早い!」

間違いなく、4学年でもトップクラスの実力だった。

「風の盾よ。我を護れ!」

ゴオオオオオオオオッ!と、ルミナを包むように小規模の竜巻が生まれ、水の刃を防いだ。

「あっ。良かった」

「良くありません!!あれでは身動きが取れず、敵の思う壷ですわ!」

アイナスが言った通り、相手の生徒はこれみよがしに、魔法を紡ぐ。

「炎の槍よ。敵を貫け!風の槌よ。敵を打て!」

休む暇もなく次々と放たれる魔法に、風の盾が削られていく。

「土の槍よ。敵を貫け!」

ついに、ドパアと風が途切れた。

今まで見えなかったルミナの姿がとうとう、

「あれ?」


見えない。


「なっ!?ど、どこに」

困惑する相手。

「風の槌よ」

ルミナの声は上から響いた。
相手は敵の居場所に気付く。まさか空中だなんて!?風の盾に乗っていたとでも言うのか?

「敵を打て!」

ゴオオ!!振り落とされる風の鉄槌に相手は成す術もなく、激突。ステージから吹っ飛ばされる。

「場外!勝者ルミナ・サレー!」

「やったー!」

「まったく。ヒヤヒヤとしましたわ」

手を叩いて喜ぶマイヤ。アイナスも薄く微笑んでいる。
そこへ、エルヒィードが来た。

「ルミナ・サレー!」

「はい!」

背筋を伸ばし、ビシリと敬礼するルミナは、本物の軍人のようだった。

「今の戦い方を説明しろ」

「はい。まず、敵の戦力が未知数なため、直接の戦闘は避け、分析を行うために、自分が墓穴を掘ったと油断させ、敵に魔法を使わせました。これには、敵の魔力を削ぐというメリットもあります。そして、自分は勝てると判断したのち、空中から奇襲をしました。以上です!」

「・・・・・・うん。中々の戦いだった。これからも精進するように。そこの気絶したバジリスタ!!30周走ってこい!!」




《Gステージ》

「アイナスすごーい。あっという間に勝っちゃった!」

「当然ですわ。この私が、負けるなんて考えられません」

「残るはマイヤか。一番最後の戦いだ。皆注目するだろう。ふふ」

「緊張するようなこと言わないでよー」

エルヒィードの目を隠れて雑談する三人。

そこへ、

「気楽ねーあんた達」

リデーネが現れた。一人で。

「なんの用ですか?貴女と親しくなった覚えはありませんのよ」

アイナスの言葉にリデーネは、

「くす。私の対戦相手を見ておきたくて」

と、マイヤに目を向けた。

「ええっ!?私の相手はナターシュって」

「かえてもらったの」

「そこまでしてマイヤと戦いたいのか?」

「そうよ。楽しみだわー。平民の凡血が、この貴族である私にどこまで対抗できるか。くすくす」

じゃあね。と、リデーネは立ち去る。アイナスはブチ切れる寸前だった。マイヤは必死にアイナスを宥める。

ルミナは、ふるえていた。

「ふふふふふふ」

心底楽しそうに。

体中の血がゾクゾクしていた。

「なら見るがいい。努力の果てにある、人の可能性を」

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