93゚ (01) =2人の出会い= 青々とした快晴の空の元…1つの命が途絶えようとしていた。病院には声が響く。 「ばあちゃんっ!!ばあちゃんっ!! おねがっ…置いていかないで!!」 その声の持ち主は俺、詩遠。 俺の祖母は持病が原因で、発作を起こしていた。俺を幼い頃から1人で育ててくれた、たった1人の家族。 ずっと一緒にいるんだ…今までそう思っていた。辛いときも傍にいてくれた祖母。 祖母と暮らしている理由…両親の仕事が忙しいから等と、生易しいものではなかった。俺の産み親は、俺を棄てた。 幼いながらに"おれはいらないこ"そう思ってきた。 そんなとき、祖母は教えてくれた。 『いらない子なんて誰1人としていないんだよ。おばあちゃんはずっと詩遠の味方だからね――…』 詩遠…その名前だっても祖母から授かった名だ "まっすぐ前を見ていつも笑顔で、人を幸せに出来る子になるように" そう願って詩遠と名付けた。 「ばあちゃん!!お願い……死なないで…」 「………うた……いな…さい」 ピーー 心臓が止まる音が病院内に響く。 「午前10時33分…」 頭が真っ白になる……それはこのことかと頭の隅で思う。 「お前等医者じゃないのかよ!! ばあちゃんを治してくれるって…………あ゙ああ!!」 ばあちゃん…ばあちゃん…朝になるまで涙がとまることはなかった。 [→] [戻る] |