93゚ (16) 勿論、組に混じっていた白川の者は知らない じゃぁ他にも誰かいたってことか? 考えがぐるぐると頭の中を駆け巡る 「遙…」 「はい」 「本家の所々の監視カメラを隅まで見ろ」 遙は一礼をして、仕事についた これにはなにかある 多分…詩遠に関係のあるものの仕業だ いや…詩遠の親だ 詩遠の両親は詩遠が幼いときに、亡くなっている 詩遠は棄てられたと思っているが 二人はとても子供が産まれてくるのを楽しみにしていた 名前は父親の方が正孝(マサタカ)、母親の方が幸恵(ユキエ) この人たちは俺らヤクザにとって伝説の人間だ まだ生きていた頃、とてもお世話になった 久原組…まぁ俺だが ここは荒れていて、いつも組を潰しては縄張りも広げていった 別にヤクザにとっては当たり前だが、この人たちはそれを嫌がった 正孝さんの母親、つまり詩遠の祖母にあたる人は、俺の前の代の父親と仲が良かった やはり父親も荒く、詩遠の祖母に助けて貰った だから詩遠の力を知ったときも、俺は思った お前で二人目だ…と 幸恵さんが詩遠と同じ力を持っているのだ でもいきなり二人の生息が途絶えた 調べてみたところ、どこかの組に殺されたらしい まだそいつらの正体が分からなかった…これをきっかけに見つかればいいと思う そしたら俺がこの手で潰してやる [←][→] [戻る] |