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(28) -Side詩遠-
目を覚ますと、久し振りに見た畳の香り
「詩遠くん、おはよう」
「…來人さん」
起き上がると來人さんが、優しく出迎えてくれた
目を擦っていると腹の虫が鳴る
來人さんと顔を見合せ、2人で笑い合う
こういうのも久し振りだ
「來人…さんは俺の事..」
「怖くないですよ?…詩遠くんは詩遠くんでしょ?」
頭をぐしゃぐしゃに撫でられた
バラバラになった髪を直していると、襖が開いた
和やかな雰囲気に戸惑ったのか、なかなか開けた人が出てこない
來人さんがはっとして、席を外す
「えっ?…らい………志紅…」
現れたのはあの時、俺を拒んだ志紅だった
口を開こうと思ったが、今開くと志紅を傷付けそうだったので止めた
「詩遠…あのね、あの時はごめんなさいっ!!…詩遠だって怖かったはずなのに
俺、詩遠の友達でいる資格ないよね…」
泣きながら話す志紅に、本当にそう思ってくれていたんだ…そう思った
「ううん…友達でいる資格なんていらないよ。ずっと仲間でしょ?」
俺がそう言うと志紅はもっと涙を流しながら、俺に『ありがとう』と言ってくれた
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