93゚
(24)
「え?じゃぁ、懍ちゃんの部屋も作ったの?」
蓮さんの作ったご飯を食べながら、思った事を口にする
俺が居なかった間に、懍ちゃんの部屋を作ったらしい
しかも俺の隣だってさ
俺にも家族が増えたみたいで嬉しい
懍ちゃんのお父さんとお母さんがいないときは、ここに置いておくんだって
「じゃぁ、懍ちゃんも俺たちの家族?」
「わぁい!!…おにいちゃんがおにいちゃんになったぁ」
ご飯中にガタガタ机を揺らして、懍ちゃんが蓮さんに怒られた
本当の家族みたいで心が暖かくなる
その幸せに浸かっていると…裏門から渇いた鐘の音
「誰だ?」
蘭さんがだるそうに腰を上げ、裏門へ行く
ガタゴタッとさっきよりも大きな音が聞こえた
「詩遠っ!?」
目の前が暗くなって、懐かしい香りが俺を包んだ
でも…今の俺にとっては辛いものだった
「離せ!!」
幸慈を振りほどいて、ついでに頬を殴る
「ずっとほったらかしにしてたくせにっ!!…今更なに!?
みんなどうせ離れていくくせに!!
母さんも父さんも…みんないなくなるくせに
こーじだけは信じてたのに………っ」
今までの不安は幸慈の事だった
いつもウザイくらい傍にいるのに、今回は傍に居なかった
「こーじだって、どうせ一緒なんだ」
ボソッと吐いた言葉の後に、ヒリヒリと頬に痛みを感じた
[←][→]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!