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93゚
(02)

 
「―おん。詩遠」
 
「うっんぅ……」
 
聞き慣れた低い声がして、目を開けると幸慈が映った
 
あ…、午前から仕事入ってたんだっけ?
 
「ふぁああ…んっ、ごめん。仕事あるんだよね」
 
欠伸を噛み殺し、身体を起き上がらせる
 
一度伸びてから車を出ようとすると、ジーンズをはいていた
 
幸慈を見ると「俺が着せた」と悠々と言う
 
なんか…もう俺のプライドとか無視ですか
 
「本当最悪…」
 
「おら、行くぞ」
 
俺の言葉を無視して、先をドンドン進んで行く幸慈
 
見失わないよう後を追いかける
 
歩きながら周りを見ていると和風的で、懐かしい感じがした
 
「「お帰りやさい」」
 
ビクッ
 
強面の方々が腰を低くして、幸慈に挨拶をしていた
 
こわっ…でも美形な方いっぱい居ません?
 
「あーあれ、あいつ呼べ」
 
「あいつ…ッスか?」
「あいつって誰だ?」
「いや、分かんねぇ」
 
えー。
ここの方達大丈夫ですか?
 
幸慈の後ろで様子を伺っていると、1人の美形さんと目があった
 
えっ、目逸らしてくれないんだけど
 
チラ見じゃなかったの?
なんかすっげぇ見てくる
 
無意識に幸慈の服の裾を掴んでいたのか声をかけられる
 
「あ?…どうした」
 
未だ目を逸らさずに首を左右に振ると、視界がグルリと回転した
 
目の前には不機嫌そうな幸慈の顔
 
「あれだ。來人…來人呼べ」
 
やっと呼びたい人の名前が浮かんできたのか、2回名前を繰り返し俺を抱える
 
俺もう…子供じゃないんだけど
 
幸慈に下ろしてオーラを送ると、これも無視されそのまま
 
うん…悲しい
 

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