93゚ (16) 來人さんが戸惑っているのがわかったけど、それでもやめられなかった。罪悪感でいっぱいだった。スッと襖が開き、人が入ってきた。 「え、來人さん泣かせたの?」 「違いますよっ "ごめんなさい"ってずっと…」 どうやら入ってきたのは詩遠らしい。顔…合わせずらいな。本当に僕はやってはいけないことをしてしまった。 詩遠が僕の隣に座る。ビクッと身体が震えて、笑えた。なんでだろう…あんなに愛おしかった詩遠が、今では怖い。 「大丈夫だって!!ほら、ピンピンしてるだろ?」 にこって笑って腕を僕に見せる。他にも傷付けたのに、僕を許そうとしてくれている。どうしてそんなに優しいの? 「"友達"」 いきなり來人さんが口を開いた。 「だからではないでしょうか? 詩遠くんは友達を大切にする、優しい方ですよ」 ちょっと、照れるじゃん。と詩遠は顔を染めて言う。また涙が出た。僕はなんて人と出会えたんだろう。 「ありがとう。詩遠」 めいいっぱいの感謝の気持ちを込めて、詩遠は笑ってくれた。姫は一度目を覚ましたけど、もう一度寝てしまったらしい。でも命に別状はないって。 姫の恋人らしき人にはすっごい怒られて、もうしないてください。と言われた。もちろん謝って、姫に会いにいった。寝ていたけど、心から謝罪した。 僕は大切な人と出会ったみたいだ。 [←] [戻る] |