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(15)
詩遠はそう呟いたあと床に崩れ倒れた。僕がナイフを捨て詩遠を起こそうとすると、1番怖いヤクザの人が僕を突き放した。
「警察には仕事柄、通報できねえ。もう詩遠に近付くな…
と言いたいところだが、こいつから話しかけるだろうよ。
もうこいつを傷付けるな。」
強い目をして僕を見据えた。頷こうとしたとき、部屋が乱暴に開いた。無意識にそちらを見ると、額に汗を浮かべた男の人がいた。
見た目からしてきっとこの人たちと同じ職種。僕の前を通ったとき、薬品の匂いが微かにした。……お医者さんかな?
「んだこりゃ…」
そう呟いたあと、一人一人慎重に診ていった。そして、姫……会長のところにいったとき顔色が変わった。
「やべえな…出血が酷すぎる。顔色も…。すぐ俺の病院に運べ!!」
僕が……駄目なところを刺しちゃったの?僕が、僕が、僕が、なんで…もう自分がわからない。
僕は意識を手放した。
目を覚ますと、寮部屋ではない天上が見えた。起き上がると、広くて昔のような部屋だった。
「あ、気付かれましたか?僕は詩遠くんの世話係をさせていただいています、來と申します。
ご気分はいかがですか?」
丁寧に紹介してくれた來さん。"大丈夫です"と一言いい、頭を下げた。謝り続けた。涙がいっぱい溢れたけど、布団に吸い込まれたけど、謝り続けた。
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