93゚
(13)
「なにしてんだよっ、みんなをこんなにして!!」
「そう、お前だ。姫は僕なのに。詩遠は王子様。僕と詩遠は結ばれる運命。なのに、お前はずっと詩遠の傍にいて。妖精なんかじゃなかった。お前がお前がお前がお前がお前がお前がお前が!!邪魔だったんだよ。いつも隣隣隣隣隣隣隣隣隣。だから話せなかったんだ。邪魔だ。邪魔邪魔邪魔邪魔。
お前が消えればいい」
そう聞こえた瞬間、詩遠の俺の名を呼ぶ声しか頭になかった。腹を見るとナイフが刺さっていた。あれ…?血?
そのまま床に倒れた。痛みはなくて、遙さんの匂い。遙さんの腕。助けにきてくれた…遙さんが泣いてる…?
「なか、ないで?…おれ、へいき…です、よ」
遙さんはなにも答えずに、ぎゅっと抱きしめてくれた。俺も、遙さんに手を伸ばしてぎゅってした。感覚はなかったけど…遙さんがまた返してくれた。
途切れそうな視界の中、唯が少しだけ動くのが見えた。良かった、みんなも肩がちゃんと上下してる…。
また遙さんを見ると、頭を撫でてくれた。優しい笑顔で、俺の好きな笑顔で。大好きな手で。
お腹に痛みはなくて、息はしずらいけど、苦しくはなかった。
「すぐ李以が来ますからね…待っていてください。
目が覚めたら、キスしてさしあげますからね?」
俺はゆっくり目を閉じた。
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