93゚ (12) 詩遠が首を振る。良く見ると、首輪と手錠がかけられていた。手首は擦れたのか…血がにじみでていた。 羽山が憂に注意している間に、唯が詩遠を連れだそうとまわりこんだ。俺が合図を送るとともに、茶月は羽山をおさえつける…つもりだった。 俺が合図を送ると、唯は走って詩遠の手を取った。……が反対の手が羽山の手と繋がっていた。 呆気にとられている唯をよそに、羽山は唯の手を離すように手首を切り付けた。 「ああーっ!!」 唯はすぐに離れて、切られた手首を押さえた。さらに羽山は、さっき痛めた右肩にナイフを伸ばした。 茶月が咄嗟に唯に抱き着いて、それを背中で受け止めた。 「……………っ、」 そのまま唯と一緒に床に倒れた。 「ゆい、さつき…?」 沙夜は意味がわからなくて、2人に近寄る。泣きながら床に座る。その背後から羽山が、みぞに蹴りをいれた。 「あぐ…っ」 その場でみぞを押さえて沙夜は倒れ込む。憂がキレるのは目に見えていた。けど…これじゃ憂まで… 「てめえ…っ!!」 案の定、憂は羽山に殴りかかる。俺は慌てて遙さんに電話をいれた。視線をあげたころには…憂は横腹を刺されていて。 目の前には羽山。 「あ、いや…」 「やめろ!!…これ以上誰も傷つけるな!!」 詩遠がそう叫ぶと、羽山は首をかしげた。"詩遠はそんなこと言わない""これは詩遠じゃない"1人言のようにそう言って、詩遠の肩を刺した。 「いあ゙ああ」 [←][→] [戻る] |