93゚ (15) 「俺の親父は、今の俺と同じ歳に組長になったんだ まぁ凄く荒れててな…その時、帛江さんと出会ったらしい。 俺は5歳ぐらいだったから覚えてねぇけど」 帛江さんとは、詩遠のおばぁちゃんの事だ その名前が出ると詩遠の力は静まり、変形したコップが静かに机の上に落ちた 帛江さんは40歳で帛江さんの傍には、詩遠の母親…幸恵さんがいた 俺は良く親父の後に着いて、親父が人を殺していく様を間近で見ていた 帛江さんはそんな俺を見て親父に言った 『人を殺すなんてこと…してはいけません。 貴方の周りを見てご覧なさい 息子さんが可哀想です…こんな小さい頃から、血を見せてはいけません』 幸恵さんは俺の頭を撫でて、にっこり笑った その笑顔があまりにも優しくて、俺はなぜか涙が出た 「親父にそんなことをして欲しくなかったんだろうな…」 やがて、幸恵さんは正孝さんに出会い結婚した 俺も式に参加した…もう幸恵さんは子を授かっていた 「幸恵さんは20歳でお前を産んだんだ」 「えっ…」 「生きていれば36歳になる」 そこでもまた驚く詩遠 生きていれば…という言葉に吃驚したのだろう 「幸恵さんは裏の世界では有名だった。 幸恵さんがいれば、一番になれると言われていた 俺はんなの興味なかったがな」 でも、ある会長の手から逃れられなかった それが桜鳳会の会長だ 詩遠に手が届かぬように…帛江さんに詩遠を預けた [←][→] [戻る] |