93゚ (14) その頭を優しく撫でる 「俺が、俺のためでしょ?…みんなが教えてくれた あんな親のためにすることはないよ。あいつらは俺を裏切ったんだから…」 『みんな』は肝心なところを教えなかったみたいだな ったく…使えねぇな 「お前は勘違いしてるみたいだな。 あの方たちは俺の恩人でもあり、詩遠の恩人でもある人だ」 そう言うと、詩遠は嘲笑うように目を逸らした 「恩人?…俺を棄てたくせに? こーじにとっては恩人かもしれないけど、俺にとっては憎い存在でしかないんだよ」 詩遠の周りにどす黒いものがまとわりつく さっきまでココアの入っていたコップは、形を変形させて浮き上がる 部屋がミシミシするのが分かった やばいな… 「詩遠…落ち着け…。 大丈夫だ、今から話すことは流していいから」 まだ収まることなく、小さく震えていた そんな詩遠を抱き締めて、背中を撫でて落ち着かせる 少し収まったのか、部屋の軋みは無くなったが、まだ力は静まっていないようだった もうこの世にはいながいが、詩遠をこんな風にした桜鳳会を恨んだ [←][→] [戻る] |