流れに流れて。
2
「そうらしいね、僕も昨日知ったばかりなんだ」
ニコニコと笑っている壱先輩の目は温度を含んでいない。というよりも目が笑っていない
オレはこの時、昨日の高宮の顔を思い出してしまった。やはり、オレには無縁だと思っていたヤンキーだよ。
高宮だって、ここにいる壱先輩だって…
オレにはそんな怖い顔や目つきなんてできっこないし、
「だったら、イイの?和哉みたいな男にはもっと相応しい相手がいるはずよ!!」
なんだか興奮気味に喋りだした彼女に対して、興味なさげに目を伏せて溜め息を漏らす壱先輩。
「だったら尚更あんたら関係ないじゃん」
あっと思って口を塞ぐが、時既に遅し。
オレの口から出てきた言葉に彼女は顔を真っ赤にして腕を再び挙げた。
な、殴られる!!
パシッ。
「ねぇ…あんたさぁ
まだわかんないの?」
壱先輩の強張った声がオレにではなく、彼女に投げかけたものと気づいて思わずそちらに目を向けてしまった。
振り下しそこねた手は、見事に壱先輩に止められていて、その手からはギチギチと音を立てていた。
「彼は僕が現れた時になんて言った?」
「っ一くんって…」
そこで彼女は何かに気づいたようにオレに視線を移した。
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