[携帯モード] [URL送信]

Underdog

最初は持ち物検査を嫌がる女子高生のごとくギャーギャー騒いでいた俺達だったけど、赤磐さんが腕時計をつついて本気で睨んでくるから仕方なく動きはじめた。

ライトに照らされると、何もしなくても汗がにじんでくる。しかも、普段しないようなモデル用の立ち姿だから、変なところの筋肉がひきつる。筋肉痛で済めばいいんだけど……。

「ああ、君もう少し右の眼鏡の彼に寄ってくれる? うん、いい感じ」

秋栄は涼しげな表情のまま目配せした。
耳をつけてることさえ忘れれば、撮影自体はわりと楽しい。メンバーが妙によそ行きな表情なのも。俺もあんな顔してるんだろうな……。

「ハル君、どうして俺のふくらはぎをつつこうとしてるのかな〜?」
「仕返し」

さっき「ついうっかり」ハルの腕にぶつかったのを根に持ってるらしい。耳をつけたままだから、若干迫力にかけるけど。

撮影は大きな問題もなく進んでいく。
でも、何かがずっと足りないような気がしていた。
こうやってみんなで何かを作り上げる楽しさは、ついこの間も経験していた。
そのときはあいつがいた。
今は――


「ヒロ、どうした?」
「疲れた? 休憩入れる?」

みんなが俺を見ていた。ボーッとしてたらしい。

「あ、すみません。ちょっと曲のこと考えてて」

休憩なんてとんでもない。さらに余計なことを考えちゃいそうだ。
無理やり元気を出して、カメラの前へ向かった。






to be continued..

ここまで読んだ記念にポチッとどうぞ!

[*前へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!