Underdog
8
「コンセプトは?」
「犬」
赤磐さんの答えは簡潔でいてすべてを語っていた。
「好きな色なんて聞くから何かと思えば……」
秋栄が絶句気味に呟く。
秋栄は黒、ハルは赤、亮は黄色、俺は青。
俺達の手には、それぞれが選んだ色の首輪と、けもの耳カチューシャがあった。ちゃんと犬っぽい……。いや、問題はそこじゃない!
それらを手にしたまま呆然としてる姿を見て赤磐さんは盛大な勘違いをかます。
「中途半端かな? やっぱり尻尾も付けるべきだったか……でも予算の関係上そうもいかなくてね……」
「どういうベクトルで売り出そうとしてるんだよ……」
犬耳バンドなんてあだ名がついちゃったらどうしよう。きっとライブではみんなして遠吠えしたり穴掘ったりするんだ。ライブグッズは犬耳カチューシャで、ファンの子はみんなそれ付けてライブに参戦するんだ。あれ、意外と楽しそう……いやいや、だからそうじゃない。
「これ、付けなきゃダメっすか?」
汚いものでも触るように、指先でカチューシャをつまむハル。ごねて付けずに済むなら俺だってそうする。
が、
「撮影時間は限られてるんだよ、無駄な時間を作らない」
パンパンと手を叩きながら言われた。拒否権は存在しないらしい。
……やっぱりねー。
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