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Underdog

「やっぱり納得いかないんだけど」

練習時間が終わり、スタジオを追い出されてからも、亮の興奮はおさまらない。

「さっきはそれでいいって言ったじゃない」
「でも……!」

亮のもやもやもわからないではない。話し合いではらちがあかないからと提案されたのは、由緒正しいじゃんけんで、その一発勝負であっさり勝敗が決まったのだ。

まぁでも疲れたし帰って寝よう……。いやまて、その前に夕飯どうしよう。今日はちょっとあっさりしたのが食べたいな。気分はすっかりオフモードに切り替わっていた。
その時だった。



「あ、いた!」
「うそ」
「マジで?」

すっかり気が抜けていた俺の耳をつんざいたのは、若い女の子のキンキン声。

「ハルだよね?」
「やば、背高いし」

道の向こう側にたむろしていた女子高生の一団が、ざわざわとこっちに向かってきた。自転車の通行を余裕で妨害しながら、俺達の真ん前まで来た4、5人の制服姿の女の子たち。若いなぁ……なんかオーラが違う。目をキラキラさせて、

「あたしたち、この間のライブ見てから超ファンなんです!」
「応援してるんで、頑張ってください!」
こんな夜まで、ここで待っててくれたのかな。想像したら自然と顔がにやける。

「サイト見たんですけど、CD出すってマジですか?」
「あ、うん……」

若い力に押され気味になりながら頷くと、少女たちから歓声が上がった。っていうかサイトってなんのことだ。赤磐さんに聞かなきゃ。



秋栄にたしなめられて帰路につくまでの間、女の子たちは絶え間無く賑やかだった。いつの間にかファンなんてものがついてたんだ……。
俺達は握手したりサインしてみたりとひと時の間アイドル気分を味わったのだった。



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あきゅろす。
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