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Underdog

「だーかーら、この曲はもっとテンポ早い方が良いんだって!」

亮が地団駄踏んで主張する。清々しいほどの我が儘っぷりだ。
ふぅ、とため息混じりの紫煙を吐いて、ハルが一言。

「ライブの時のがちょうど良いだろ」
「俺もそう思う。第一、この間のでギリギリついてける早さだったのに、テンポを上げて苦しむのは亮だよ」
「俺だって日々進化してるもん!」
「ポケモンかよ」

黙って見てるつもりだったのについ突っ込んじゃった。

「作詞した立場としてはどう? もっと早くした方がこの曲の魅力が引き立って限定生産分があっという間に完売してドラマの主題歌なんかに大抜擢されちゃうと思う?」
「ずるいよ秋栄。俺そこまで言ってないし!」

秋栄も別の意味で大人気ないよなー。

「あいつに口で勝てる自信ないわ……」

ハルの呟きに全面同意だ。



久しぶりにスタジオに集まり、あわよくば収録も済ませちゃおう、というはずだったのに、なんか相変わらずカオスです。妥協って言葉をみんな知らないんだろうな。もしくは意味を取り違えて覚えてるとか。


「――で、ヒロはどう思ってるわけ?」

う……、頼むからそんなに見つめないで。恥ずかしい……っていうより単に怖い。

「あー……じゃあさ、一度亮のいうテンポでやってみようよ。聞いてみたら何か分かるかもしれないし」

必殺、問題先伸ばし。
呆れきったハルの視線を全力で受け流した。

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