Underdog 3 秋栄と俺の最寄り駅のちょうど中間に当たる駅で落ち合うことになった。 『何の話?』 メールでさりげなく探りを入れてみたけど、『会ってから話す』とそっけない返事が返ってきただけだった。 何だろう、この緊張感。 「夜分にごめん。どうしても直接返事が聞きたくなっちゃって」 落ち合ったのがちょうどスタバの前だったから、そのまま中に入った。好きなものをおごるといわれたから一番甘そうなキャラメルなんとかを頼んだ。 秋栄は、なにやらこだわった複雑な注文を繰り出していた。俺、店員じゃなくてホントに良かった……。 「で、話って? 電話じゃダメだったんだろ」 「そうだね」 清々しいほど上の空な返事。秋栄は、カップから立ち上る湯気を見つめていた。海よりも深い思案に耽っているようだ。 「……どう思ってる?」 「な、何が?」 「俺は新たに曲を作るべきだと思ってるんだけど」 あ、そっち? 「CD制作の話を聞いてから、ずっと考えてたんだけど、真吾のこともあってなんとなくみんなのいるところじゃ言い出しにくくて」 秋栄はいつになく饒舌だ。メンバーのなかじゃ一番思考の切り替えが早いに違いない。しかし、饒舌ついでにとんでもないことを口走った。 「やっぱり俺ヒロのこと好きだし」 [*前へ][次へ#] [戻る] |