Underdog
2
「……CDねぇ……」
本来なら狂喜してもいいくらいの話なんだけど、全然気乗りしない。
とりあえず家に帰ったけど、何をする気力も起きない。ぼーっとしてて気づいたらすっかり夜になっていた。
腹の虫だけが今日も絶好調に鳴いている。
「まずは飯か」
立ち上がって、ポケットからこぼれ落ちていたケータイを拾い上げる。
真っ暗な液晶をしばらく見つめていた。
意を決してアドレス帳を開く。
ただ夕飯に誘うだけだ。真吾が前にそうしたように。
……
…………
「……出ないなー」
留守電設定にされてないらしく、延々とコール音が続く。15回まで数えてみたけど、あまり長いとストーカーみたいだからあきらめた。
そりゃそうだよな。別れの挨拶もしないで離れていった相手の電話に、そうホイホイと出るわけがない。
駅前にある牛丼屋でご飯を済ませ、コンビニで立ち読みする。漫画読むのもなんか久しぶりだ。この間までひたすら練習の日々だったからな。
尻が震えた。――いや、着信だ。
『今から時間ある?』
秋栄からだった。
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