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Underdog


俺達の初舞台は、なんとか拍手と歓声に包まれて終わった。



「今日はホントに、ありがとうございました!」


それから1時間後、俺はステージ上でいったのとそっくり同じ台詞を吐いていた。――駅前の通りを一本裏手に入ったおしゃれ居酒屋で。
ガバッとお辞儀した俺を見て、タクトさんは俺の肩をバンバン叩いて大爆笑した。

「そう固くなるなって。リラックスしなきゃせっかくのアルコールで悪酔いするよ?」

そんなこと言われても!
ライブを終えてすっかり力が抜けていた時に、シンシアのメンバーから打ち上げの誘いを受けた。あまり深く考えずに来ちゃったけど、とんでもないことじゃないか!

「ハル君だっけ。すごい正確に弾くよね、あんなややこしい曲」
「や……たいしたことないっす」

褒められたハルは、照れ隠しに毒づくこともできずジンライムを胃に流し込んでいる。これはちょっと面白い。

シンシアのほか、ライブに出演した2つのバンドと、運営スタッフの人たちが、貸し切りにした店内で思い思いに騒いでいた。

「やっぱり君らはライバルとして認めないといけないみたいね」

突然しみじみとタクトさんが呟く。ピザをつまんでいた手に緊張が走った。
いきなり潰されるなんてそんな……。

「なに情けない顔してんの」

首を傾げるタクトさんに、スタッフの人がにやっと笑う。

「ライバルは潰すってあの記事信じてるんでしょ」
「あーあれね……、うん、事実よ。こうやってプレッシャーかけて酒飲ませて酔い潰すの」

タクトさんはからからと笑うと、空になっていた俺のグラスになみなみとビールを注いでいく。
っていうかなんでおねえ言葉?

「ちなみに、ヒロくんは酔うとどうなる?」
「さぁ……結構記憶なくしちゃうんで……いろんな人に迷惑かけてるみたいっす」
「へぇ。――じゃあ今夜はうちに来る?」
「へ?」

話の繋がりが分からない。
肩を抱かれ、間近で微笑みかけられた。体の芯が痺れていく。色気に満ちた流し目から目が離せない。

「いや、その……」
「うちの人がうるさい?」
「いや、一人暮らしなんでそのへんは……」
「じゃあ問題ないじゃない?」

そうかもしれない。
流されかけていたその時、首根っこを引っ張られた。後ろに倒れそうになる。が、座ってた椅子ごと誰かが受け止めてくれた。――ハルだ。

「すみませんけど、このあと負け犬だけで反省会なんで」
「反省会っ!?」


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