Underdog
7
俺達の初舞台は、なんとか拍手と歓声に包まれて終わった。
「今日はホントに、ありがとうございました!」
それから1時間後、俺はステージ上でいったのとそっくり同じ台詞を吐いていた。――駅前の通りを一本裏手に入ったおしゃれ居酒屋で。
ガバッとお辞儀した俺を見て、タクトさんは俺の肩をバンバン叩いて大爆笑した。
「そう固くなるなって。リラックスしなきゃせっかくのアルコールで悪酔いするよ?」
そんなこと言われても!
ライブを終えてすっかり力が抜けていた時に、シンシアのメンバーから打ち上げの誘いを受けた。あまり深く考えずに来ちゃったけど、とんでもないことじゃないか!
「ハル君だっけ。すごい正確に弾くよね、あんなややこしい曲」
「や……たいしたことないっす」
褒められたハルは、照れ隠しに毒づくこともできずジンライムを胃に流し込んでいる。これはちょっと面白い。
シンシアのほか、ライブに出演した2つのバンドと、運営スタッフの人たちが、貸し切りにした店内で思い思いに騒いでいた。
「やっぱり君らはライバルとして認めないといけないみたいね」
突然しみじみとタクトさんが呟く。ピザをつまんでいた手に緊張が走った。
いきなり潰されるなんてそんな……。
「なに情けない顔してんの」
首を傾げるタクトさんに、スタッフの人がにやっと笑う。
「ライバルは潰すってあの記事信じてるんでしょ」
「あーあれね……、うん、事実よ。こうやってプレッシャーかけて酒飲ませて酔い潰すの」
タクトさんはからからと笑うと、空になっていた俺のグラスになみなみとビールを注いでいく。
っていうかなんでおねえ言葉?
「ちなみに、ヒロくんは酔うとどうなる?」
「さぁ……結構記憶なくしちゃうんで……いろんな人に迷惑かけてるみたいっす」
「へぇ。――じゃあ今夜はうちに来る?」
「へ?」
話の繋がりが分からない。
肩を抱かれ、間近で微笑みかけられた。体の芯が痺れていく。色気に満ちた流し目から目が離せない。
「いや、その……」
「うちの人がうるさい?」
「いや、一人暮らしなんでそのへんは……」
「じゃあ問題ないじゃない?」
そうかもしれない。
流されかけていたその時、首根っこを引っ張られた。後ろに倒れそうになる。が、座ってた椅子ごと誰かが受け止めてくれた。――ハルだ。
「すみませんけど、このあと負け犬だけで反省会なんで」
「反省会っ!?」
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