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Underdog


「音合わせする時間はないよ」
「ぶっつけ本番だろ、分かってる」
「ホントにいけるんだな?」
「いけるよ」
「暴走するなよ」
「いつの話だよ」

秋栄がまるで過保護な母親のようにせき立てる中、ハルはもくもくと準備をする。
こうしている間にも、出番は着実に近付いている。

ハルの赤いギターが視界に入った。
あいつの部屋でやった地獄の特訓を思い出す。あれからも、メンバーから外れた後も、ずっと練習してたんだろうか。
だとしたら……。

だとしたら、すげぇバカだ。



拍手喝采が聞こえ、前のバンドの演奏が終わったんだと分かる。

「出番だ」
ハルが立ち上がった。

「負け犬らしく吠えますか」
秋栄が欧米人のように肩をすくめてみせる。

亮がクルッとスティックを回した。

これが最後になるかもしれない。そんな不吉な可能性は今は忘れよう。
このステージを見に来てくれた人達。対バンを承諾してくれたシンシアの人達。赤磐さんたち。それから、メンバー。
すべての気持ちに真摯に答えたい。

「行くよ」

俺達はスポットライトの下に足を踏み出した。



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あきゅろす。
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