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Underdog


初めてのライブだから、と家まで迎えに来てくれた。それはすごく嬉しい。俺専属運転手が出来たみたいで。ただ、

「リラックスして、練習の成果を出せば良いよ。ふざけた演奏したら即解散だから、そのつもりで頑張って」

励ましたつもりの脅し文句に送られ、赤磐さんのプリウスを下りる。
嫌になるほどの晴天だ。負け犬には眩しすぎる。


「君が『Underdog』さん?」
「あ……」

振り返ると、憧れだったインディーズバンド「シンシア」のヴォーカル、タクトさんがいた。
ビンテージジーンズが今日も決まってる。真似して同じのを 買おうとしたけど値札にゼロが多過ぎて買えなかったやつだ。

「今日はよろしくお願いします!」
「ん、実力派だって聞いてるから、楽しみにしてるよ」

タクトさんはニッコリと笑う。が、ライブで見たときみたいな、体の芯をとろけさせる甘い微笑みとは違っていた。

「何しろ、いきなり事務所の力で対バン申し込んで来ちゃうわけだから」

なにそれ聞いてないんですけど!
ごり押しで対バンさせてもらったってこと?
つまりこの微笑みは……

「ま、御手並み拝見、ってところかな。うちを圧倒させるような演奏を期待してるよ」


軽やかに手を振ると、タクトさんは控室へと去っていった。


全身から汗が噴き出した。
今さらだけど凄い緊張してきた。冗談抜きで下手な演奏したら解散だ。
そういえばタクトさんってライバル相手にはひたすら火花を散らしまくった態度で接するって聞いたことが。つまりライバル認定されたってことか? それは有り難いことなのか?

「おはよーヒロくん。中に入らないの?」

恐怖に固まった俺を、亮ののんきな声が呼び戻してくれた。
続いて秋栄も到着する。



けれど、いつまで待っても真吾は現れなかった。

リハーサルが終わっても。

入場が始まっても。

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あきゅろす。
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