Underdog
15
「わざわざ来てもらってごめんね」
「いえ……」
こんなところに連れて来られるって分かってたら絶対来なかった!
高層ビルの上層階にある、高級レストランに、俺は赤磐さんと一対一で向かい合っていた。
おかしいだろこのシチュエーション!
隣のカップルなんて「僕のために毎日味噌汁を作ってほしい」「えぇ、あなたのためにヘルシーメニューを作るわ」「ありがとう。絶対に幸せにするよ」なんてやってるし!
本気ださなきゃ来れない店に、どうして「腹減ってる?」「はい」ってだけで来ちゃうんだよ!
「この店が気に入らないみたいだね」
この人は心の底から理由が解らないらしい。
「そりゃ……気後れしますから」
「そうなのか。例えば、君がバンド活動を続けてて、レコード会社に声をかけられてこういうところに連れてこられたらどう思う?」
「……話なんて耳に入って来ないっすね」
「なるほど。いや、坂出君に聞いたら、ちょっと高い店の方がやる気が出るっていうからさ」
坂出って……あ、秋栄か。確かに秋栄なら、こういう店も慣れてそう。
「人それぞれか、うん。ちなみに加嶋君ならどんなお店で話を聞きたい?」
「そっすねー……普通にファミレスとかでいいんじゃないっすか。おごってもらえたらラッキーみたいな」
赤磐さんはぶほっと吹き出したのだった。
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