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Underdog
12

「真面目に練習せな、本番まで間にあわへんで。ヒロも可哀相に」

呆気に取られてる俺達を尻目に、ちゃっちゃと準備をしている真吾。

「……なんのつもりだよ」
「まぁ黙って見ときぃや」

ハルはしばらく真吾のことを視線で殺すくらいの勢いで睨みつけ、やがて壁際まで下がった。

「ほな、気を取り直して頭っからいくで」

自信満々で余裕すら感じさせる態度が、みんなに伝播していく。

「最初から通しだよね?」
「せや。俺とはまだ合わせてへんやろ」
「仕方ないな、付き合うよ」

俺もマイクの前に戻った。歌詞を手元において、もう一度歌う。
秋栄に指摘されたところは、とりあえず裏声に統一してみることにした。

骨張った真吾の指が弦の上を自在に踊り音を奏でる。
さすが作曲者だけあって楽譜は暗譜済みのようだ。しかも、テクニックもあるから聞いていて安心感がある。亮や秋栄の音とも調和してる。

やりやすいな……。
そんなことを考えていたらふと目が合った。
真吾はニヤッと笑う。
なんかドキッとした。
俺と演奏できて嬉しい、って言ってるみたいだったから。


最後まで歌い終えた。
心地良い疲労感に包まれる。
真吾が俺のマイクを奪う。

「なぁ、ハル。あんたがプロデューサーさんやったら、どっちをステージに上げる?」

優しく問い掛けた。
相手の頭に向けられた拳銃の引き金を、彼自身に引かせようとしていた。

長いため息をついた後、ハルは答えた。

「……あんただな」

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