Underdog
11
「なぁ、もう一回合わせてみようよ」
「そうだね、ヒロの言う通りだ」
秋栄は同意してくれた……かに見えた。
「でもその前に、気付いた点をあげていった方がお互いにとって有意義だろ。俺もハルはまだ合わせられるレベルまで達してないように感じたんだが」
きらめく言葉の刃がハルを切り裂く。
ハルは言い返さない。ま、まだあの苦手な部分を克服できてないのは事実だもんな。
「ヒロも、高音は地声で歌うのか裏声にするのかはっきりさせてほしいね」
「はぅっ……」
ハルの血に濡れた刃が俺にまで向かってきた。避けきれない。
確かにそうだけど、意見を聞こうと思ったんだけど、全然そんな雰囲気にならないし……もう。
亮はすっかりへそを曲げてる。ハルも満身創痍だ。秋栄はみんなをまとめるのを放棄してる。
残る良心は俺だけじゃないか。
「あのさぁ……」
ちょっと青春っぽく説教でもたれてみようとしたときだった。
「ホンマにやる気あんのかいな」
ヤツが立ち上がった。
そばに立てといたギターを手にツカツカと歩いてきたかと思うと、ハルのギターのアンプを引き抜いた。
不快な高音が鳴り響く中、肩を叩く。
「お疲れさん、交代や」
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