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Underdog
10

久しぶりにメンバー全員が顔を揃えている。
なのにスタジオの雰囲気は最悪に近かった。

それぞれ自分の楽器のメンテにいそしんでるふりをしながら、ディレクターよろしく椅子に浅く腰掛けた真吾から注意を反らさない。

楽器を用意していない俺は、とりあえず喉をうるおしてみる。
真吾はあくびをしたりケータイをいじったりと、勝手気ままに過ごしているようだ。
このまま傍観するだけで終わるとも思えないけど……。

後ろを振り返り、準備が済んでるか確認する。
うん、よさ気な感じ。

「じゃあ、始めようか」

初めての音合わせだ。
それまで音楽作成ソフトの音でしか聞いたことがなかったこの曲を、自分達で奏でる。
バーチャルがリアルになる。
ゾクゾクする時間の始まりだ。
――と思ってるのは俺だけかもしれないけれど。


まずは一回通して演奏してみた。


ふぅ、と息を吐いたハルは、ドラムを睨みつける。


「亮、テンポがズレただろ」

ムッとしたはずの亮は、なぜか満面の笑みを作った。怒ると笑うタイプだったらしい。

「ハルくんこそ、なんかすごい拙いギターだったよね」
「喧嘩するなよ、そんなのは練習次第でどうにでもなるだろ」
「秋栄の音は真面目過ぎてつまんねえ」
「何だと?」

止めに入ったはずの秋栄もペースを乱される。
……あっという間にナツカシの険悪な雰囲気に。

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