Underdog
9
苦手なピッキングか……。
そういえば亮も似たようなこと言ってたな。
俺にしても、限界ギリギリの高音がサビの一番良いところに出てくる。
やっぱりわざとそうしてんのかな……?
でもなんのために?
「最初から気に入らなかったんだ。遅れてきたクセに偉そうにしやがって」
小学生の悪口か、君は。
「アウェーで勝つ方が気持ちいいからな」
すっかり打倒真吾に燃え上がっている。
「目的は忘れんなよ」
「何だよ目的って」
「ライブを成功させることだよ」
俺としては軽口のつもりだった。
が、ハルは虚を突かれたといった表情でまじまじと俺を見た。
「まさか、本気で忘れてた?」
「……」
今度は目を逸らした。
意外とわかりやすいヤツ。
「……何やってんだか、俺」
どこかで聞いたような溜め息だ。
「やりたいことやってるだけだよ、俺達は」
俺は、どちらかというと自分に言い聞かせるように、答えを呟いた。
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