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Underdog


爆笑して休憩も終わり。
再び地獄の特訓が始まった。

さっきよりも気持ちは前向きになっていた。
練習もいいけど適度な休憩も大事だという良い証明だ。

途中、暑くなってエアコンをつけた。
喉が資本の俺は、2リットルのペットボトルを1本半飲み干していた。
この空間に名前を付けるなら、間違いなく「ストイック」だ。

しかし、気になることが。


「……あのさ、さっきから思ってたんだけど」

聞き飽きたフレーズをさらに奏でようとする前に、声を挟んだ。

「妙に音がもたついてるような気がするんだよな、……今練習してるところだけ」

全体的な完成度が高かったから最初はそうでもなかったんだけど、段々そこばかり耳につくようになってきた。

「……気付いたか」

ハルは苦々しげに楽譜を見せた。
その箇所だけ書き込みがすごい。
「バカ」とか「いつか殺す」という低レベルな罵り文句のほかに「ひたすら練習!」とか「だれかに聞かせる?」とかいうセルフアドバイスもある。
これを実践したってことか。

「苦手なんだよ、こういうピッキング」

またこのヘビースモーカーはタバコに手を伸ばした。

「この間の飲み会の時にうっかり喋っちまったんだけど、それを聞いてたとしか思えない」
「まさか……」
「秋栄も同じようなこと言ってたから、ほぼ間違いないぜ」

ハルは細長く煙を吐き出した。
そして、導かれる答えを言う。

「あいつは、真吾は、わざと俺達の苦手な曲を作りやがった」

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