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Underdog

高校2年から続いていたバンド『クラッドソイル』の崩壊を象徴するように、その黒いギターは木っ端みじんになった。
竜彦の額からはぼたほたと血があふれている。破片でぱっくり切ったらしい。ちょっと怖い。っていうか止めなきゃ。

「何か押さえるもの……」
「話反らしてんじゃねぇよ」

キョロキョロしていた俺に、真剣よろしくギターの柄が突き付けられた。
なんか冷や汗出てきたんだけど……。

「納得いく説明をしてもらおうか」

目を逸らしたら斬られる。
そんな錯覚さえ覚えた。
真っ赤なスポットライトがステージを照らしつづける。

だって、俺だっていろいろ考えたんだ。
CDを出そうって話を持ち掛けてくれる人もいた。
でも、そいつは俺達を見てくれていたわけじゃない。
このままだらだら続けていって先はあるのか。
俺には……見えなかった。
これは所詮遊びなんだ。
真剣な遊び。
いつかは終わりを迎えるものだ。
その「いつか」は、多分今だ。

ごめん、竜彦。




睨み合ったまま、何分が経過しただろうか。

「……以上、クラッドソイルでしたっ」

直哉のやけっぱちな声がして、舞台に幕が引かれた。



明かりが落とされ暗くなる視界の中、肩を落とした竜彦のシルエットがなぜだか胸を締め付けた。

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