Underdog
3
うわ、すげーびっくりしてる。
振り返ればメンバーも口を開けたまま固まっていた。
そりゃそうだろうな。
事前に一切話し合ったりしてないんだから。
完全にフリー。
アドリブ。
マイク持つ者の独壇場。
と、ここまではよかった。
あんまりよくはなかったんだけど、よしとする。
「……今、なんて?」
コーラス用にセットしてあったマイクを使い、ギターの竜彦が唸った。
「だからぁ、解散だって」
俺はことさらくだけた口調で答えた。
この態度が相手の怒りに油を注ぐとも気づかずに。
「誰が?」
ますます低い声で、竜彦が問い詰めてきた。
俺は明日の天気でも確認するように、軽く言った。
「『クラッドソイル』が……」
「っざけんなあぁぁぁっ!」
直後左頬を襲った右ストレート。
全く避けられず、ドラゴンボールのごとく吹っ飛ばされる俺。
床に尻餅をつき、痛みに顔をしかめながら見上げた先には、般若の形相があった。
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