Underdog
2
「秋栄のは?」
「あるけど……」
いつになく自信なさ気だ。もしや、秋栄も作詞は苦手なタイプか?
無印良品のノートを見せてもらう。
が……
「英語だ……」
「辞書持ってないなー」
「……なんだろ、訳さなきゃいけないっていう強迫観念が」
そこにあったのは流麗な筆記体で書かれた、それだけで絵になりそうな歌詞だった。あくまで見た目だけ。誰も読めない。というか、戦意喪失。
「僕は英語の詞をメインに書いてたんだよね」
秋栄は肩をすくめて苦笑している。なんか確信犯っぽいけど……いっか。
「次っ、ハルの見せてよ」
「良いけど」
ため息をつくと、ハルもノートを開いた。
夢を見るたび 思い知るんだろ
どうせたいしたことないんだ
世界を壊すくらいの気持ちでいても
蹴飛ばし壊したのはボロアパートの壁
そよ風なんていらない
吹くならいえひとつたやすく飛ばすくらいの
木漏れ日なんていらない
さすなら肌を焦がすくらいの直射日光を
「……ハルっぽいなー、なんかイライラしてる感じとか」
一瞬良いかも、と思ったことは死んでも言わない。
どんな曲調が合うかな〜とか考えちゃったことは生まれ変わっても言ってやらない。なぜって、癪だから。
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