Underdog
10
不躾なほどに照り付けて来るライト。露出した肌から汗がにじむ。
誰かに促されてマイクスタンドの前に足を踏み出した。
暗くてはっきりとは見えないけど、客席は満員らしい。
「今日は、ありがとう!」
そう叫ぶと、ごおっと反応が返ってきた。嬉しくなる。
「俺達の音楽を聴いてくれて本当に……」
あれ、俺達って誰?
俺の左斜め後ろにいるのは……
「……竜彦?」
恐る恐る、振り返った。
そこには誰もいなかった。メンバーなんて誰ひとりいなかった。
誰も。
誰も!
「……はいはい、夢ね」
武道館並の規模のライブハウスなんて、出たことないし。願望にもほどがある。
もう少し寝直そうか。
そう思って寝返りを打ったその時。
「うわっ!?」
目の前に見知らぬうなじが!
音速で飛び起きてあたりを見渡す。
新築っぽい汚れてない白い壁。物の少ない部屋だ。未開封の段ボールがまだ部屋の隅に積んである俺とは大違い。
そこで、俺はもうひとつ、重大な事態に気付いてしまった。
「なんで……パンツ一丁……」
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