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Underdog

今から半年ちょっと前。
秋がそろそろ終わるという頃。
俺は――俺達は、小さなライブハウスのステージにいた。
ライトを全身に浴びて、少し汗ばむ体。
シャツの裾であおいで中に風を送る。
でも、一番汗ばんでいたのは多分、マイクスタンドを握った手だった。

観客の怒号のような歓声が耳を通じて頭の中を揺さぶる。
今アドレナリンが出てる瞬間だな。
どうにかなっちゃいそう。
他のことなんてどうでもよくなってく。
この気持ち良さに溺れていきたい。

「ヒロ、次いかなきゃ」

左に立っていたベースの直哉が俺の肩を叩いて我に返った。

今演(や)ったのが最後の一曲。
このバンドで最初に作ったオリジナル曲。
思い出がありすぎで、途中で歌詞がとんだ。
でも、歌詞を覚えてた奴らが歌ってくれた。
次は嗚咽が込み上げてきて歌えなくなった。
完璧すぎるひと時だった。

こつ、とマイクを掴む音がフロアに響く。
ざわめきがさざ波のように引いていった。

「みんな、――」

荒い息遣いも全部、マイクを通して広がっていく。

「今日は本当にありがとう。皆には、感謝してもしきれないっす」

ガバッと頭を下げる。パラパラとした拍手と野次が飛んだ。
満足だよな。
もう一度頭を上げて、フロア全体を見渡した。
今日のことは、きっと一生忘れない。

マイクを掴み直した。

「やりたいことはやり切ったっつーか……」

フロアがざわめく。


大きく息を吸って、一気に言い放つ。

「俺達『クラッドソイル』は、本日この時をもって解散します!」

少しの真空状態の後。

「「「えぇぇーーーっ!?」」」
俺を除く全員が、揃って声をあげた。


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あきゅろす。
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