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Underdog

「……はよっす」

むっつりした声とともに、茶色いギターケースを持って現れたのは、やっぱりというかあいつだった。

「はい、5分オーバー」

時計をちらっと見て無表情に返してやる。おお、眉間のシワが当社比2倍に。

「もしかして少し迷った? ここってちょっと看板目立たないよね」

すかさず秋栄がフォローを入れる。
来生が素直に小さく頷いた。なんだこの、手負いの獣を手なずけた風の空気。

「秋栄って大人だよなぁ」

「まぁね。多分2歳は上だと思うし」

「え?」

「二浪してるんだ」

マジで年上じゃん!
何馴れ馴れしく下の名前を呼び捨てにしちゃってんだ!

「あんまり気にしないでよ。……へぇ、来生のは赤か」

来生は勝手に準備していた。炎のモチーフが描かれた赤いギター。

人目をひく奴って、何をやってもつい視線を奪われるもんなんだな。
調弦も指慣らしも、そのまま映画のワンシーンになりそうだ。

秋栄、大鳥と目配せする。



いっちょやったれ!



マイペースにコードを押さえている来生を強引に巻き込み、即興演奏が始まった。

例えるなら暗闇を突っ走るジェットコースターみたいな。
生半可な早さじゃない。
気を抜けば振り落とされる。

ヤバい。すっげぇ楽しい。






そんなデッドヒートに終止符を打ったのは、5人目の男。



「自分ら、この程度の腕でよくバンドなんか組めたもんやな」



大河内真吾。
意外と関西弁。

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