Underdog
3
「みんな早いねー」
あくびしながら歩いて来る。あ、こいつ俺より背が低いっぽい。しかも童顔だから、高校生って言われても違和感ない。
「大鳥、荷物はないんだ?」
「んー、ないねぇ」
のんびりしたやつだ。
今日は、お互いの音を知ろう、というか誰がどの楽器やってるのか、まずははっきりさせようというのが目的だ。
だから俺はギターだし、秋栄はベース。
大鳥亮は手ぶらってことは……
忘れてきたか? 電車とかに。
「一番乗りだと思ったんだけどなぁ」
首を傾げながらズンズンと歩き、座ったのはドラムの前。
「えっ……」
そんなちっこいのにドラム?
「人は見た目じゃないでしょー」
相変わらず半分寝てるような声だけど、体は真剣にシンバルやペダルの位置を調整している。
そして。
スティックをクルッと回すと。
助走無しにフルスピードで突っ走りだした。
ちっこいくせに、全身の力をたたき付けるようにして出す、渾身の音。
叫びたいから叫ぶ、みたいに、叩きたいから叩く、ような。
何より、心のそこから楽しんでますという空気。
多分こいつもドラム封印する気でいたんだろうな。
水を得た魚って言葉がしっくり来る。
新たに「ドラムを得た大鳥」ってことわざができても良いくらいだ。
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