Underdog
2
今日の集合場所は、会社じゃなくて近くのスタジオだった。服はもちろん私服。
一番乗りでスタジオに入った。
……と思ったけど先客がいた。缶コーヒーを片手に壁際にたたずんでいるのは。
「坂出秋栄……」
「おはよう、加嶋くん。一つ聞きたいんだけど、なんでフルネームで呼ぶの?」
「えーと、その方が覚えるかな〜って」
一つ聞きたいんだけど、なんて言われるとドキドキしちゃうじゃん。いろいろ質問してはっきりさせたいんだろうけど。
「何なら名前で呼んでくれて構わないよ。昔からそう呼ばれてるし」
「そう? じゃあ遠慮なく。……秋栄もギター持ってきたんだな
「いや、僕のは……」
良く見ると、アンプに繋がっていたのは4本の弦を持つ白黒のギター。
「そっか、ベース担当だったんだ」
つまり秋栄のポジションはベースってことか。
「加嶋は、ギターなんだ?」
「んーと、前組んでた時はメインボーカルとギターだったよ」
アンプに繋ぎ、音を確かめる。少し放っていただけなのに、大分音が狂ってきてるな……。
基本的なコードを鳴らしていたら、秋栄も便乗してきた。ひとつひとつの音がはっきりしている。安心出来るっていうか、自信があるんだろうな、自分の腕に。
「おはよー」
そこに現れたのは、手ぶらの大鳥亮だった。
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