美月さんから水空
「水都、砂糖いくつ?」
【砂糖とコーヒー】
そう言った空に、水都は書類から目を上げた。眼鏡を外し、目頭を揉みながら「…二つ」と返事をする。
その返事に、空は目を見開いた。水都が甘党なのは知っているが、専らコーヒーに入れる砂糖は一つかナシの筈だったから。
「珍しいじゃん、いつも一個なのに…」
ぽちゃん、ぽちゃんと角砂糖をカップに投入。「ミルクは?」と聞くと水都は首を縦に振る。
「疲れてるんだ…」
「へー…」
ミルクがくるくるとマーブル模様を描くのをスプーンで邪魔をする。
邪魔、と言えば水都が持ち帰ってきたあの書類…仕事を持って帰るなんて水都らしくないが、来年は担任を任されるという事らしいから致し方ない。
「空?」
「んー、なんでもない」
高校時代から付き合いだして、一緒に暮らすようになって…今、空は大学生になった。そうなれば、自然とすれ違う事も多くなる。それが、悔しくてもどかしい。自分が、まだまだ子供だという事を思い知らされるから…
行儀悪く、かちんとカップの縁でスプーンを鳴らし、水都にコーヒーを差し出した。水都は眼鏡を戻し、カップを受け取ると早速口を付ける。
その様子をじーっと見つめながら、空もカップに口を付ける。暫くは二人とも無言だったが、視線にいたたまれなくなった水都が口を開いた。
「…なんだその目は」
「それ、甘い?」
指差す先には水都のカップ。水都は訝しげな視線を空に向けるが、空はその視線をまっすぐに受け止める。
「まぁな…」
そう答えた水都に、空は自分のカップをテーブルに置いた。そして、水都に近寄ると手の中にあるカップも奪う。
「そ…」
背伸びをして、顔を近付けて、空からのキス。触れて、舐めて…少しだけ舌を絡めた後、顔を離した。
「ん…確かに甘い、な」
水都のシャツにしがみついたまま、ぺろりと赤い舌で唇を舐める。その仕草に水都はスッと目を細めた。
「…誘っているのか」
とびっきりの低音。ぞくりと肌が泡立つ。
「…疲れてんだろ?」
腰に回った腕に引き寄せられながら、空が誘う。
「だから、だ…」
「んん…」
湿った、熱い吐息。衣擦れの音。寝室に向かう足音。
残されたのは、
――冷めきったコーヒーの入ったカップが二つ。
END 070301
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美月さんから一周年祝に頂きました♪
ひよってる水都萌え〜!!
さそってる空萌え〜!!
(>д<)=3
ちなみに私も珈琲飲めません(笑)
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