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06


「はい、こちら警察所ですが何か・・・」


『トシくん?あの、万引きが・・・』


「美咲か?住所は?」






電話に出たのは運よく、十四郎だった。住所を言い、すぐに行くと言われた。
長谷川店長にも事情を話し、二人でコンビニで待っている事にした。

総悟の事は心配だが、今は信じるしかない。追いかけた所で、私は何の役にも立てないのだから。
数分後、トシくんと数人の警察官がコンビニに来た。

パトカーにに乗って、万引き犯が逃げていった方向に行った。
コンビニから1キロくらい離れた公園で総悟らしき人を見かけた。
車を止めてもらい、私は確かめる為公園に行ってみた。

そこには、犯人の上に乗っかってSに目覚めている総悟だった。






『総悟!大丈夫・・・』


「美咲・・・?犯人は捕まえやしたぜィ」


「総悟、お前やるな。警察になれるかもな」






総悟が捕まえた万引き犯は、最近この辺りで騒がれていた犯人だった。
その為、総悟はこの町のヒーロー的存在になってしまったのだ。

警察の偉い方にも表彰され、警察の夢へ一歩前進した。






『店長も喜んでたよ、コンビニが儲かるって』


「それはよかったでさァ。美咲、おんぶ・・・」


『無理だよ。頑張って自分で歩きなさい』






##namae_1##の馬鹿ー、と笑いながら言っている総悟に手を差し出した。
不思議そうにこっちを見つめている総悟に言った。






『おんぶは無理だけど、手くらいは貸してあげるよ』






私に返って来たのは言葉ではなく、総悟の笑顔だった。
その笑顔に何度救われただろうか。多分・・・、きっと総悟がいなかったら私は今頃どうなっていたか。

その後は、銀ちゃんが公園まで迎えに来てくれた。例の万事屋がこの公園の近くらしい。
私が行きたい、と言うと銀ちゃんは大きなため息をついてからわーったよと言ってくれた。


万事屋までは歩いて数分といった処だろうか。本当に近かった。






『万事屋ってここ?』






着いた場所は、スナックの2階だった。万事屋銀ちゃんと書かれた看板が置いてあるだけの殺風景な所だった。






「そう、ここが俺の仕事場」






玄関に入と、小さな可愛いらしい靴が一足置いてあった。
誰のかなと思い銀ちゃんに聞こうとしたが、女の子の声で阻止された。






「おかえりアル、って誰アルカ!」






女の子は私たちの方に向かって叫んだ。
お団子頭のチャイナ服を着た、可愛い子だった。






「こいつらは俺の弟と妹。前話したろ」






「あ、総悟と美咲って名前アルカ?それなら前聞いたアルヨ」






女の子は私たちの事を知っているみたいだった。銀ちゃんの方を見ると笑っていたので、私もつい笑ってしまった。
そして、万事屋に上がった。中は、銀ちゃんの家とは違いとても綺麗に片付いていた。

さっきのお団子頭の子が片付けたのかな、と思いながらその子を見ていた。






「何アルカ?あ、ワタシは神楽アル」


『神楽・・・?私の事は、美咲でいいからね』






宜しくアルと言って差し出された手はとても小さくて、暖かかった。
何歳なのかな・・・。小学生くらいかな。

とにかく小さくて、少しでも傷つければ壊れてしまいそうな。大切にしたいと思うもの。
家族と同じ。神楽も、守りたいと思った。






『ねぇ、神楽は小学生?うーん、小学5年生くらいかな』


「違うアル!14歳ネ」






神楽と銀時が出会ったのは一年前。歌舞伎町の裏路地で蹲っている神楽を見つけた銀時。

何週間も食べていなかったのか、頬は痩せこけ腹はへこんでいた。
そんな神楽を当時、住んでいたアパートに運んでカップラーメンを一つ与えた処急に元気になり、カップラーメンを10個食べたとか。
それから2人で万事屋を建設し、今まで2人でやってきたと言うのだ。





「お、おまえ・・・、14歳ですかィ?見えねェなぁ、小3かと思いやしたぜィ」


『こら、総悟!神楽に失礼でしょ!仮にも中学生なんだから』






総悟の頭を軽く叩いて、神楽に美咲が謝った。そうか、神楽は中学生なんだ。
良く見れば、万事屋の端っこに制服があった。可愛いセーラー服だ。
あの制服は・・・、銀魂中学か。あそこは中高が一緒になっている学校だ。だからそのまま高校に行ける。

神楽曰く家から飛び出て来たらしい。だから、あの日裏路地にいたんだろう。それを銀時が拾い、育ててきたのか。
じゃあ、学校のお金を払っているのは銀ちゃん?






「何アルカ、こいつ。レディに向かって失礼な事言ってるネ!最悪アル」


『本当、最悪ね総悟』


「あーあ、総悟。嫌われちまったな、美咲と神楽にー」


「う、うっせー」






嗚呼、落ち着く。楽しい。
やっぱり、ワタシは間違ってなかったネ!家から飛び出して、一人でここまで来たかいがあった。
パピーとあのまま一緒にいたらワタシ・・・、ワタシ銀ちゃんたちと出会ってなかったネ。

あの日、裏路地で倒れていたワタシを拾って食べ物をくれた銀ちゃん。
そして、学校まで行かせてくれた銀ちゃん。

ワタシは幸せなんだな。
ありがとう、銀ちゃん。あのままワタシは死んでたら、何になってたのかな。
空の上から銀ちゃんたちが見えたのかな。でも、今ワタシは生きてるから。


生きてるから、空の上からじゃなくてちゃんと同じ目線で見えるヨ。






「ワタシ、部活あるから行ってくるネ」


『行ってらっしゃい』






その笑顔をまた見たいから。
だから、ここはワタシの家。大好きな家族。血は繋がってなくても、大切な大事な家族が出来たから。




「行ってきます!」



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