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第三の国
懸け3


「まあ、これなら大丈夫だろう」


空いた片手と足を器用に使って下着ごとそっくり床に落とす。瓶からもう少しだけ薬を拾い、これ以上ない大きいため息を吐く。


「上手く塗れりゃいいけど……」


何分、そういう事を他人にした事はあっても自分には一度もない。いっつもどうしてたっけ?そんな事を考えながら恐る恐る後孔の皺に指を持って行った。


慣れない事に反発したのは体の方だ。俺の尻は立ったままの体勢で固く緊張し、薬を塗るどころか侵入を断固拒否した。



両足が肉の筋が分かるくらい踏ん張る。ダメだ。これじゃあ指なんて到底入んねぇ。どうするか。



考えて俺は足を開いて立ち膝の体勢に変えた。入れる側しかした事のない自分にはかなり屈辱的な格好だが、それでも体は弛緩した。


床に着いた片手で均衡を保ち、尻を高く突き出して今度こそ意を決して指を突っ込む。痛ぇ。第一関節が入っただけでぶわっと汗が出た。


引っ掻かれたのはもっと奥。浅く息を吐きながら深く進む。もうちょい。あと、爪半分。



「なにしてんの、お前!?」


ぎょっとして振り返ると寝室に入ろうとしたあけびが扉に肩を預けて立っていた。俺は瞬きも動く事も出来ずに床に手をつき尻を上げて指を突っ込んだまま、半開きの扉にしたまま部屋を去った源平をひたすら憎んだ。


最悪の状況だった。今まで色んな修羅場があったが自分がこんな情けない窮地に陥ったのは初めてだ。下着を下ろしてるだけならまだしも、思いっきり扉に尻を向けて結合部は丸見えだ。言い訳も何一つ弁解も浮かばねぇ!!



「手伝うか!?」


その言葉に呪縛が解けたように指が覚醒した。ずるりと異物を引き抜いた痛みに嗚咽が漏れたが構わず下着ごと下衣に手をかける。ニタリと口角を上げて近づくあけびはさっきの言葉から今の俺の行為を完全に自慰と勘違いしている。



「ちょ、あんた勘違いしてるだろ!!違うから!!これはそんなんじゃねぇ!!」


かと言って、じゃあどうしてそんな事をしていたと問い正されれば俺は芋づる式に高砂とのことを話さなければならなくなる。成す術が見えない。肝が冷える。



「溜まってんだろ!?」



阿呆かあんたと怒鳴って相手を責めても他に取り繕いようがない。焦って上げかけた下衣も手首ごとあけびに制せられ、反対の手が全体重で肩を押さえつけた。





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あきゅろす。
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