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第三の国
変わらぬ日常2

1日の作業を終え、奴隷たちはわらわらと広間に向かう。その道すがら、彼らの口からはこの五年ですっかり日課になった不平不満がこぼれ出る。


「ケッ……今日もバカの一つ覚えみたいに鞭を振るいやがって!!」


「まったくだぜ!!高砂がいないから、やたらデカイ面する監視が増えてやがる!!」


「そういや、塔の方はどうなんだ!?」


「聞けばあっちは、あけび大監視長様の下で楽しくやってるみたいだぜ!?鞭打ちもほとんどないみたいだしよ。だから最近は聞こえて来ねえだろ、あいつらの悲鳴。休憩なんかもきっちり取ってくれるらしいし……まさに天国と地獄とはこの事だぜ」


「そうそう!!最近あっちもこっちも、あけび様ーあけび様」


「そういやこの間、監視たちが塔長をベタ誉めしてたっけ」


「か〜っ!!持ち場代わりてえ!!」


「おっ!!いいな、ソレ。あけび様に掛け合ってみるか!?」


「ば〜か。無理に決まってるだろ。高砂不在の今、リコッタの実権を握るのは塔長なんだぞ!?俺らの話なんかに耳を貸すかよ」


「そんなの、わからないだろう!?」


「そうだ、そうだ!!」


自分たちが奴隷なのも忘れて、一部の男たちは夢見心地に優遇を語る。



変わらぬ日常の中、新たに塔長になったあけびの評判だけはうなぎ登りだった。

人並みの扱いを受ける奴隷たちはもちろん、高砂の独断専行に嫌気がさしていた監視たちからの支持も高かった。




◇◇◇◇


「チェダー」



広間に着くと聞きなれた声に名前を呼ばれ、振り返る。




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