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*花落し
□遇


―かぁごめかごめ

籠のなかのとりぃは





店主と名乗った男に連れられ、土方は店の奥へと進んだ。
"合言葉"を言ったわけだが 内心心配せずにいられなかった。

『罠だとしたら…』
鼓動も速くなる。



「さぁ こちらへ」

示された先は屋敷の一番端の部屋。
「あまり他のお客様の来ない部屋ですから」
他の部屋と柄の違う襖。
何か"特別"なのだ。


「入りますよ」
声をかけて店主が襖を開く。
ほんの少し 空気がピンと鳴った。

部屋に居たのは一人。
紺色の振袖を纏い静かに座っていた。
朱の紐で結んばれた、僅かに衿にかかる髪。それが
「白…銀髪か?」
「えぇ そうです」


「陰間としては少々歳は喰っておりますが なかなか良いモノですよ」
店主が土方を部屋の中へ招く。

ご挨拶を と店主が銀髪の男に言った。

「ギンと申します」

三つ指を付き、よく通る声で名乗った。
顔を上げたその時 目が合った。

深い紅の瞳が行灯の明かりにちろりと光る。



「こちらにいらっしゃる時は―」
店主の声に我に帰る。
「番頭にこれを見せればお通し致します」
そう言って渡されたのは、銀の細工に珊瑚をあしらったほおずきの簪だった。


「よろしければまた いらして下さい」

店主に見送られ店を出る。
何か地に足の着かない心地のまま土方は帰路に就いた。






「―おぅ 銀時」
酒と肴の乗った膳を持って、奥の間―例の部屋の襖を開けたのは派手な着物に片目を包帯で隠したいつもの高杉だった。

「なんだ 晩酌か?」
銀時と呼ばれた部屋の主が応えた。
「別にいらねぇなら無理しねぇでも…」
「あーっ いるいる!いりますっ」
さっと居なくなろうとした高杉を呼び留める。
「お 大福もあんじゃん」
「あぁ…ってかよ」
さっきまでのしおらしさは何処へやら。
姿はそのままなのに話す様子などは別人である。

「お前ホント猫かぶりだよな」
「高杉が支度しとけって言ったんじゃねぇか…てゆーかテメェに言われたかねぇな」
そう言ってずるりと毛の束―先程まで高杉の被っていた毛の長いかつらを手にした。

「着物もきちんと着てよ〜 "入りますよ"だって」
「うるせぇ」
向かいあって座る銀時の頭を小突く。


「しかしよ」
酌をしながら銀時が言った。

「ココに連れて来るのって珍しいな 上客なのか?」
「…まぁな」
高杉は言葉を濁す。
高杉自身も身なりを変えて接客していた。
何かあると考えるのが自然だろう。

「それに帯刀してたしな」
「……」

よく観察しているとこちらが感心してしまう。
「よく見てんなぁ…」
「まぁね〜」
「そーいうとこだけは」
「一言多いんだよ」
ったく…とブスくれる銀時に
「ほら 怒んなって」
高杉が徳利を差し出した。

「まぁ…そんなとこだ」
銀時の猪口に酒を注ぎながら高杉が言う。

「来た時は相手してやれ あと俺の名前は出すな」
「……」
くぃと銀時が酒を煽る。
その肩を抱いて高杉が言った。


「聡いお前ならわかるだろ?」
「…ん」


"良くない"事なのだと。



「そんで」
高杉の手が銀時の着物の裾を引いた。
「支度しとけって言ったが どこまでした?」
「そりゃ お前…」
たくし揚げられる裾を押さえながら
「"接待"するんかと思って…普通に…」
軽く睨みつける。
「ほぉ じゃあ無駄にしちゃ悪いよなぁ」
にやりと笑うと高杉から口づけた。
口腔に酒の匂いが広がる。


「…んふ」
「いいだろ?」



銀時は抱き上げられ敷いてある布団の上に転がされた。
「あ やべ このまま寝てぇ…」
「寝てもいいぜ?」
高杉の手が、するりと着物の裾から入れられる。

「寝られるならな」
「んっ… ちょっ」

下着を付けていない 腰巻のみの下半身は容易に高杉に蹂躙される。

「ほら 寝ないのか?」
「…にゃろ」
びくびくと撥ねる躯と上がる息。


「…っ ったく…悦くしろよな」
「当たり前だ」




くすくすという笑い声と共に、影が一つに重なった。




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あきゅろす。
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