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*花落し
□誘


「失礼致します」


土方の居る部屋の障子がすぃと開き、少年がうやうやしくお辞儀をする。

「只今、店主がお客様にお目通りしたいと申しておりまして」
よろしいでしょうか?と聞かれ、土方は頷いた。


―来たか

やっと糸口に辿り着いた。
逃す事は出来ない。



やがて、一人の男が現れた。
「どうも 毎度ご贔屓にありがとうございます」
質の良さそうな暗い色の着物をきちんと着込み、長い髪が顔半分を隠している。
笑顔を浮かべ、土方の方へ向き直った。
「ほおずき屋の店主にございます。お見知り置きを」
うやうやしい態度の店主は、ささ どうぞ と土方に酒を勧める。

「聞けばお客様」
先に切り出したは店主だった。
「店の者に随分評判がよろしいようで」
「ほぉ そうかい」
光栄だねぇと嘘吹きながら土方は店主の顔をまじまじと見た。
「―あぁ これは」
気付いた店主は髪で隠れた方に手を被せる。
「このような格好で申し訳ない―子供の時分大病を患いましてね」
醜いものでこのように…
「そうかい そりゃ失礼したな」
不自然な髪は顔を隠すため か。


くいっと酒を飲み干し、土方は座りを直した。
『さて…どう切り出したものか』
「今夜は―」
店主が口を開いた。
「また冷えますなぁ」
「あぁ そうだな。そろそろ雪もちらつくような時期だ」
あぁ 真っ白な雪だ。
「俺の昔通った道場に白い萩の花があって 時期になると雪みたいに花びらが―」

「白い萩―でございますか」

一瞬空気が止まる。
しくったか…!?


「お客様…珍しいモノはお好きですか?」
そう言って、にたり と店主が笑った。
「珍しい のか?」
「えぇ その辺で見付かるようなモノではないかと」

これは 乗るしかない。

「見せてもらいてぇな」
平然を装ってそういうと、店主はすぃと立ち上がった。

「どうぞ こちらへ」


奥へ続く廊下を示した。

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