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*花落し
□序

  

 ―かぁごめかごめ




噂を聞いたのはほんの偶然だった。



数日前、俺はとある茶屋に攘夷浪士が絡んでいるとの情報を仕入れた。
真撰組として、副長としてこれを見逃すワケにはいかない。
それに関する情報を、何処からと云わず集めていた。

そんな中、たまたま一人立ち寄った居酒屋で"その噂"を耳にした。



茶屋の情報を求めていた俺は、近くのテーブルにいた男らに何気なく話しかけた。

「あそこは陰間の茶屋だがイイのが入ってるってな」
「ンだがコッチもイイっていうぜ?」
金を表すジェスチャーをしながら他の男が言う。
特に変わった話ではないか…と思いつつ聞いていると
「あんなとこ行くのは金持ちか物好きだかんなぁ…でよぉ」
急に声音を落とされ耳を向けた。

「噂だが珍しいのが居るんだってよ」
「珍しい…?」
「良くは知らねぇが主人の持ちモノらしいんで店にゃ出さねぇって話だぜ」
「じゃあ客には関係ねぇじゃねぇか」
「いンや そうでもねぇ」

ぼそりと耳打ちされる。
「"白い萩"が合言葉なんだと」

「合言葉…」
「一見じゃあ無理だが主人に気に入られてコレを言うと会えるらしいぜ」
「まぁ金子もかかるがなぁ」
「おめぇさっきからそればっかしだな」
ガハハと男達は笑った。

「"白い萩" ね」


噂とは信用ならない物の方が多い。
だのにその時は"その噂"が妙に引っ掛かった。
滅多にお目にかかれないという。
客引きの為のガセかもしれない。

でも?
もしかしたら?


珍しいと言っていた。
もしや不法な人身売買とか…


とにかく先ずは自分で確かめてみようと思った。
これは捜査と、おそらくは単なる興味だ。


そして夜、俺はその店に向かう事になる。


―――

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