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○絶対の存在 [骸犬千]
骸と犬と千種のコドモの時の話。かなり妄想。











  +絶対の存在+



貴方に付いて行くと決めて 三人でアジトから逃げ出して



初めて自由を手に入れた






アジトを出る時 骸様が一人男を持ってきた。
研究室にいた男だった。



自由を手に入れても所詮僕等はコドモで
寝ぐらを探すのも一苦労。

…そう思っていたけど。


「犬 千種 お引っ越しですよ」
路地裏の空き家にたどり着いた数日後、骸様が言った。
「追手でも来たれすか?」
犬が身構える。
「いいえ。そうではありませんよ」
ちゃんとした所にお引っ越しするんです。


そう言って連れてこられたのはごく普通のアパート。
「コドモだけでは怪しまれますからね コレが 一緒に住みます」
持ってきた男を指差した。
「コイツ…なんなんれすか?」
「僕たちの仮の保護者 といった所ですかね」
まぁ中に入りましょう と骸様が僕等の手を取った。


それから 僕等の奇妙な共同生活が始まった。



家事は僕が引き受けた。
あまり戦闘が得意じゃなかったからってのもあったけど やってみると結構楽しかったから。
骸様と犬は夜になるとよく「資金調達」に出掛けた。
たまに服に血痕が付いてたから真っ当なコトではないのは明らかだったけど。


例の男は 部屋に閉じ籠っていた。
時々壁を叩く音がしてたけど 殆どは静かにしていた。

昼間に 骸様が男を連れ出して何処かに行く事があった。
その時だけはきちんとした姿で部屋から出てくる。
ただ ドコか雰囲気が変わっていた。





ある日。
部屋を掃除していて 骸様の武器に触ったことがある。

「千種!」
突然後ろから大きな声で呼ばれて 取り落としてしまった。
「千種…」
ぱたぱたと足音が近付いて 怒られる と身をすくめてぎゅっと目を瞑った。

「ご…ごめんなさい 骸さ…」
「怪我はないですか?」

怒られるとばかり思っていたので 拍子抜けしてしまった。

「は…はぃ」

正面に回って 青と緋の眼が僕を見つめる。

「そうですか…」
ほっとした顔をして
「これは只の武器ではないんです…」
そう言った。

「お前達にも話しておいた方が良さそうですね」




その夜 食堂に三人集まると、僕と犬を座らせて骸様が言った。

「あの男は もう半分死んでます」
犬も僕も"?"という顔をしてしまう。
「骸様の連れてきたヤツですか?」
「そうです」

死んでる? 半分?

「精神は殆ど壊れてしまっています ただ体が生きているだけの状態です」

ことり とテーブルの上に 骸様が あの三叉戟を置いた。

「コレで 彼は僕の操り人形になっています」
「あやつり…れすか?」
よく話が見えない。
「そうです。コレで傷を負うと 僕と契約を交すことになるんです」
「契約…」
「僕がその者に憑依する…体を乗っ取ることが出来るようになるんです」

話の内容がぶっ飛んでて頭が付いて行かない。

「憑依してしまえばその体がどうなっても関係ない 例え死んだとしてもね」


少しだけ沈黙が流れた。



骸様が伏せていた瞳を上げた。

「この先は お前達の自由です」



そしていつもの様にふわっと笑うと
「さぁ ゴハンにしましょう 千種 手伝いますよ」
「え あ はい」
そのままいつもの夕食の時間が始まった。




「なぁ 千種」
ベッドの中から犬が声をかけてきた。
骸様は別の部屋で寝ているので 僕は犬と同じ部屋で寝ていた。

「骸サンの言ってた意味 分かったか?」
「…少し」

『傷を負うと契約になる』
『憑依したその体がどうなっても骸様には関係ない』

…多分 この先 何かあった時、僕等の体を使うかもしれない…ってことなんだと思う。


でも…


「なんれ骸サンは オレらにそんな事言ったのかな…」

僕等なんか話にならないくらい 骸様は強い。
傷をつければいいだけなら わざわざ僕等なんかに言う必要ないはずなんだ。


「お前達の自由だ って 言ってたね…」


自由ってことは…

自分の意思で 決めろって

そんなこと…



「僕は」
「オレは」


決まってるのに。


「あの人に付いて行く」


僕等に居場所をくれた。
世界を くれた。

貴方が居なければ
世界なんてない。



だから

あの人を ずっと守る。
この身なんか いつだって差し出して。






次の朝

「骸サン」
「骸様」

窓辺に立っていた貴方は いつもの様に綺麗に笑って

「おや 二人とも早いですね」


僕等二人
言うことは一緒だった。
「貴方に ついていきます」

それを聞いた時の貴方は 少しだけ驚いたような顔をして
そして ほんの少し悲しそうに

「そうですか」


窓に架った白いカーテンがベールの様だった。




そして 僕等の儀式。
二人で貴方から傷を受けて

初めて手に入れた自由で
初めて自分で決めた
骸様との契約。




それから




暫くして
あの男は全部死んだ。


僕等は少し大きくなった。
そのアパートを後にした。
もっと広い闇に行くために。



迷う必要なんてなかった。だって
貴方が僕等には絶対だから。




xxx







黒曜三人の過去話捏造。

この三人って兄弟みたいだなって妄想しました。
犬と千種は骸様めっちゃ大事で
骸様もこの二人をすごく大事にしてるんだろ〜な〜
でも表面上はドライな感じで。
普通の時の三人も書いてみたいかも…



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あきゅろす。
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