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○trick…![土銀←沖]






「とりっくおあとりーと」

手を差し出された沖田はきょとんとした顔を銀時に向けた。

「…何の真似で?」
「いやほら ハロウィンていう?祭らしいじゃん?」
「それは知っていやすが」





     +Trick…!+




10月。江戸の街はオレンジ色のカボチャに彩られて。
つくづく祭好きな街だと、見廻りに来ていた沖田は思っていた。
その途中で見知った顔を見かけ、軽い気持ちで声をかけたのだ。
よぉ とか何とか言った、次に飛んできたのがその言葉だった。


差し出した手をグーパーしながら銀時が更に続ける。

「こう言うと菓子くれるンだろ?」
「お餓鬼様限定ですがね」
「…誰が決めたんだよソレ」
むくれる銀時に
「そういう祭でしょうが」
沖田は正論で返す。

「さっき仮装したオッサンとかすれ違ったけど?」
「大人がこんな騒ぐのは江戸だけでさァ」

呆れた様にいうと、はー と落胆とも溜息ともつかぬ声を出し、銀時がしゃがみこんだ。

「… さっきパチンコでスッちまって〜 糖分切れそうなんです総一郎君」
上目遣いで食い下がる銀時に
「自業自得でさァ それと総悟です旦那」
尚も沖田は冷静に言い返す。

ちぇ と舌打ちして、拗ねた様な視線を向ける銀時に、そーいう顔すりゃ幾らでも菓子を買ってくれる野郎がいるでしょう――と言おうとして、何やら思い付いたらしい沖田が、
「…仕様がねぇですねぇ」
そう言って。
「ちょいと待っててくだせぇ」
近くの店に入って行った。




待つ事数分。
買い物袋を手に沖田が戻って来た。

「俺のオゴリでさァ」

ぱっと銀時の表情が変わる。

「わりーねぇ総司君」
「総悟です」

渡された袋の中には、カボチャの形をした棒付きキャンディーが数本束になったものが入っていた。
銀時はそれを一本取り出し、口に含む。

「苺味が良かったけどな〜 レモン味も悪かねぇか」

味に注文をつけつつも嬉しそうに微笑む。


「そうですねィ」

銀時の腕を掴み、少し引いて。
キャンディーを咥えた口の端を、沖田がぺろりと舐め上げた。


「うん レモン味ですねィ」
「…ほぇ…ちょっ!?」

銀時が間抜けな声を上げる。

「俺の方がガキですからね 施しがなけりゃイタズラ でしょう?」

ニマリと笑って、ひらひらと手を振ると沖田は見廻りに戻って行った。


残された銀時は暫し茫然としていたが、はっと我に返り、一つ首を傾げ帰路に着いた。





『ピンポーン』

夕方。
万事屋のインターフォンが鳴り、銀時が玄関を開けると
「おぅ」
立っていたのは土方。

「よぉ…って今日来るっつったっけ?」
「いや そうじゃねぇんだけどよ…」

バツが悪そうな顔をして、土方がケーキの箱を差し出した。

「その… 菓子が安売りしてたから」
「何?ケーキ?マジで」

ケーキなんて安売りするようなものではない。
家に来る口実なのは見え見えなのだが、敢えて銀時はそこには突っ込まない。
上機嫌でそれを受け取り、「あ 上がれば?」とついでに土方を呼んで居間に向かう。

「お 美味そう ってか随分買ってきたな」
「ガキ共の分もな」
「律儀だね〜 俺コレにしよ」

箱から苺のタルトを取り出すと、銀時は残りを冷蔵庫に入れに台所へ向かう。
ソファに座り、煙草を取り出した土方が、テーブルに無造作に置かれたキャンディー束に気付いた。

「飴?」

一本つまみ上げ、指で弄んでいると銀時が戻って来た。
向かいのソファに座ると、土方の手にあるキャンディーに気付いて言う。

「あぁそれ 沖田君に貰ったやつ」
「総悟に?」
「トリックオアトリート?」
「…ガキに菓子ねだるなよ」

ったく、と土方が溜息を吐く。

「うっせー 糖を恵んで貰ったんだよ…」

言い返す銀時の脳裏に、その時の事が思い返される。

「……」

妙な気恥ずかしさに土方から目を反らした。

「…何だ?」
「別に」
「総悟に何か言われでもしたか?」
「言われちゃ…ねぇけど」

煮え切らない答えに土方が
「何なんだよ」
少しイラつきを見せたが
「何でもねぇっての」
ぴしゃりと銀時に言われ、土方はその場は引き下がった。





次の日。

「総悟」

屯所の廊下で、沖田は土方に呼び止められた。

「何ですか?土方さん」
「お前昨日万事屋と…」
「会いましたね それが何か?」
「いや …その…」

土方が口ごもる。

「どうしやした?」
「…いや 何でもねぇわ」

そう言って部屋に戻りかけ、土方が障子戸に足の小指をぶつけているのを見て沖田は黒い笑みを浮かべた。


「思った以上に効いたみてぇだなァ…イタズラ」

旦那に夢中過ぎでしょ 土方さん、と呟いて。



酷く遠回しな土方への嫌がらせの成功を確信した沖田は、後でお詫びに旦那に菓子でも持っていくかとのんびり街へ出掛けて行った。





xxx




ハロウィン話でした…ぎり…
悪戯となったら沖田君かなと。二人とも弄り〜で。
レモン味は…やっぱそうでしょうと。


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