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○酔難 [土銀]
≫銀魂す。
無印ですがややエロです。ご注意。









     +酔難+





「カンパーイ」

あちらこちらの席からそんな声が上がる。
年の瀬からこっち、忘年会だ新年会だと居酒屋はとても騒がしい。



この個室でも乾杯の声が上がった。

「みんな今年もよろしく 今日はアタシの奢りだからじゃんじゃん飲んでね」

そう言ったママの、口調は女性的だが声は野太い。
個室に居並ぶその面々も、綺麗に着飾っているが、口元にはうっすら青く髭が生えている。
おかまバー『かまっ娘倶楽部』の新年会会場である。


「今日は無礼講よぉ ハイ飲んで飲んで」

向かいのアゴ美がぐいぐいと酒を勧めてきた。
何故今俺…万事屋なはずの銀さんがこんなところに居るかというと。
昨年、年の瀬差し迫り依頼も無かった所へかまっ娘倶楽部のバイト依頼が入ってきた。
さすがにガキ共にやらせるわけにはいかないからと俺一人引き受け、そのまま年明けまで手伝っていたら新年会に誘われて今に至る。
どうせ帰っても今日は一人だし、タダ酒飲めるってんで付いてきたのだ。



「パー子ぉ 飲んでる〜?」
「ってゆーか 何でその格好なのぉ?」

一人のオカマが俺を指差す。
別に本物のオカマでない俺には慣れない女の格好はしんどくて、店を出る前にいつもの格好に着替えを済ませていた。

「いつまでもそんなかったるい格好してられるかっての」
「もー アンタ女子力低いわね〜」
「俺男子だから そんなんいらねぇから」
「あ もしかして男一人で美女に囲まれるハーレム気分味わおうって魂胆?やだ〜パー子ったら〜」
「黙れ化け物ハーレム要員」

…まぁタダ酒だし。
文句はおいといて。


酒は進んでオカマ共は盛り上がり。
個室席は騒がしくなっていく。

「新八君と神楽ちゃんも誘えばよかったかしらぁ」
「いーって アイツらも今頃楽しくやってんだろうから」

今晩俺が遅くなるからと、神楽は新八宅に行っている。
お妙も居るしらしいし心配はないだろう。

その時、
「あら ちょっとゴメン」
西郷ママの携帯が鳴った。
「てる君?どうしたの〜」
そのまま携帯の向こうと喋りながら部屋を出ていく。

「ママどうしたの?」
「なんか電話みたいよ すぐ戻るって」
「あらぁそう ママも てる君には形無しねぇ」

そんなオカマ達の話が聞こえて、子供からの電話なら大した用がなけりゃすぐ戻るだろうと、ビールのジョッキに口をつける。


「そういえばさぁ」

酔っ払った隣のオカマがしなだれかかってきた。

「おい 重いぞ青髭」
「アンタって結構エロい体してるわよn」
「げほっ」

全部聞ききる前にむせこんだ。
…俺がなんだって?

「あ〜 それアタシも思ってた〜 着替えてる時とか〜」
他のオカマが便乗する。
「アンタ剣やってるんでしょ?だからかしら〜?」

つつっと襟元に指が這ってきたと思ったらそのまま服の中に入り、首元を撫でられた。

「おいィィィィ ちょっと待てェェ」
「なぁに〜 照れること無いわよ〜」
「照れてねぇよ! 見ろコレ さぶいぼ!」
粟立った肌を見せようと出した腕を
「はぁ?どれどれ〜?」
むんずと掴まれ押し倒される。

「なになに?何面白いコトしてんのよ」

そうこうしてるうちに、いつの間にか周りに寄って来ていた三、四人の元男共が加勢し、押さえられてしまった。

「色も白いわよね〜 ズルいわ〜」
「ちょっ…やめ」

じたばたするうちにシャツのファスナーがジリジリと下ろされる音が聞こえてきた。

「ちょっとくらいなら味見してもいいかしら〜」

脚にも手が這ってきて、着流しの中…ズボンのウエストに手がかけられる。
さっと血の気が退いた。

「…あの それはさすがに勘弁…」
「別に童貞ってわけじゃないんだし〜 平気じゃない?」
「マジやめろ!やめてください300円あげるから!」


…酔っ払ったオカマに敵なし。
必死の抵抗も虚しく、服をひっぺがされ万事休す…か…





…と思ったその時


「すまん 遅くなった」

すっ と障子が開いて、髪の長い女…のように見えるよく知った顔が入ってきた。

「ヅラぁ…」

人手が足りないからと、年末からコイツ…桂もバイトに入っていた。
当然今日も一緒に店に出ていたので新年会に誘われていた筈で…って。
どこ行ってたんだよとか何でお前女装のまんまなんだよとかツッコミは置いといて、半泣き状態で見上げると
「ヅラじゃないヅラ子だ …何をしてるんだ銀時」
今のこの状況を理解不能といった顔で見下ろされた。

「助けろ!っつーか助けて下さい!」
「助けると言っても…お楽しみの最中を邪魔して良いものか…」
「お楽しみじゃねーだろこの状況!」

起き上がれないまま有らん限りの力を込めてツッコミを入れる。

「おや 違うのか? あんまりモテないのを姐さん方に慰めて貰っていたのでは…」
「むしろ俺が慰みモノになりかけてるっての!」
「面白そうだからもう少し見物でも」
「今すぐ助けねぇと捲き込むぞヅラぁ」
ドスを効かせて言い放つと
「…ま まぁお姐さん方 パー子のコト離してあげてクダサイナ」
ころりと態度を変え、語尾にハートマークを付けんばかりに、ヅラがしなを作りながら言った。

「え〜 せっかくイイトコなのにぃ」
食い下がるオカマに
「ほっ ほらココお店ですしィ そういえばママは…」
「ママは電話中よ」
「じゃあもう戻って来るのでは…」
「まぁ…そーね」
そう言って、オカマ達は思ったよりすんなり退いていった。

ほっと一息吐きかけた所で
「今日はこれで諦めといてアゲル」
「ひきャ…」
むにゅ…と股間を掴んで行きやがった。


変な声のひとつも出るっての。
…ちょっと目から鼻水出そう…。








どうにか立ち直り、一人便所に向かう。


「ったく 無礼講ったってママが居なくなった途端恐怖過ぎだろ あの現場…」

ぶつぶつ言いながら小便器に向かう。
用を足していると、他の客が入ってきた。
酔っているようでやや足元怪しく、隣の小便器に向かった。
同じくらいの背格好で黒い着物…目の端に入る姿にどこか見覚えが…


「…何でいんの?お前」
「…あ?」


見覚えどころではなく。
真選組副長殿だったわけで。

「何でって隊士達に連れてこられて…つーかテメェこそ」
「あーなんつーか…俺も似たようなモン…」
「…女か?」

突然そんなことを言われ、はぁ?と奴を見れば何故か怒った表情。

「土方く〜ん 瞳孔開いてるよ〜 てかそんなワケねーだろ」
「着物に紅付いてるぞ」

くいと顎で示された、着物の肩の辺りには紅の擦れた跡。
さっき組み敷かれた時に誰かの口紅が着いたらしい。

「こ…っれは…紅っつっても綺麗なネーチャンのじゃねぇぞ?」
「何だ?言い訳か?」
「ホントだって ほら…お前も知ってんだろ オカマバーの」
「ほーぉ?」

すっげぇ疑いの眼差し…

「ちょ…マジだって 嘘だと思うんなら席に…」

一緒に来てみろと言いかけて固まる。
…マズイ。
今はヅラが来てる…。


「と…にかく お前の思ってるような事はねーから残念ながら」
「そうかそうか」

その返事を聞いて気を抜いた次の瞬間。
突然腕を掴まれ、空いていた個室に引き込まれる。
勢い余って壁に背中をぶつけた。

「いっ…てェなコノヤロー」
「こんな化粧の匂いぷんぷんさせやがって」


睨み付けてやろうと顔を上げると奴の顔がすぐ傍に来ていて、そのまま首元を嗅がれる。

「だから仕事で 俺も女の格好してたんだから当たり前…」
「女の格好で他の野郎に酌してきたんか」

何か…言ってる事がちぐはぐじゃね?
そう思ってよく見ると…こいつ目ェ座ってる。
結構酔ってやがるなぁと溜息を吐いた。


「…あーもー わーったよ」

土方の胸ぐらを掴んで、唇にかぶり付く。
舌を入れると応じるように絡めて来た。

「ん…ふ…」

濃い酒の匂いの中、口付けを深くする。
角度を変える度濡れた音が耳に届いて、腰がじわりと熱くなる。
軽い目眩は酒のせいだけじゃないんだろう。

「…はぁ は…」

離した唇を透明の糸が繋ぐ。

「これでもまだ疑うか?ヤキモチ妬きな土方サンよ」

口元を手の甲で拭いながら言うと、壁に押し付けられ今度は向こうから唇を重ねられた。

「…こんなモンくれぇで誤魔化すんじゃねぇぞ?」
ニヤリと悪い笑みを浮かべて
「しっかり調べてやらぁ」
ズボンの上から太股を撫でられる。
さっきのキスのせいで、それだけの刺激でも息を漏らしてしまう。
それを聞き逃さなかった土方が ふっと笑い
「このまま抜け出すぞ」
耳元で囁く。

「…いいけど お前の方平気なのかよ」
「構わねぇよ」



一応別々に便所から出て、店を出たところで落ち合うことにして。
廊下を歩いていたところでヅラとすれ違った。

「銀時 どこいってたんだ?」
「ちっと便所 あ 俺用あるから帰るわ あとよろしく」
「は?なら西郷殿に…」
「急いでんだよ それとどっかの個室にお巡りさん居るから見付かんなよ」

ひらひらと手を振って店の出口へ向かった。




xxx





新年1本目になります。
二人とも色んな新年会出てそうだなとか。
で 普段言わないのに酒入ったせいでヤキモチ態度に出しちゃったりな土方サンとか
それを"ったく…"とか言いつつちょっと喜んでたりする銀サンとかを受信してみたり。

今年もどうぞ宜しくお願いしマス☆


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あきゅろす。
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