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▼Text
○一番先 [土銀]


壁に掛けてある日捲り暦を一枚破る。
九日から替わって十日の日付。
灯りを落としたままの暗い部屋で、その時は過ぎていく。




     +一番先+




ぼんやりと暦を眺めながら考えていた。


『コイツが 目を覚ましたら―』


隣に居るのは、寝息をたてている万事屋。
コイツの家に来たのは夕方頃だった。
買ってきたケーキを食べて体を重ねて…そのまま隣で寝入ってしまっていたのだ。

気がつけば日付も変わろうかという時刻。
電気を点けていない部屋の中は、窓から入る街の灯りにうっすら浮かび上がって見える。


万事屋に声をかけようかと思ったが、よく寝入っていたので止めて煙草に手を伸ばす。
窓の外は人の声がする。
かぶき町はまだ眠りそうにない。


ふと目に留まったのは日捲りの暦。
もうこんな時間だし、いいだろうと一枚破るれば表れたのは十日の日付。


そう。

今日ここに来た目的は一つ。


『万事屋の誕生日を傍で過ごす』


愛しい…でいいのだろうこの相手の記念日を一緒に過ごす。
それだけ と言ってしまえばおしまいだが、実際は随分こそばゆい事で。
別にいつもと変わらない筈なのに、なんとなく奴が特別に思えて甘やかしたくなって…
ねだられたケーキも、つい大きなのを選んでしまったり。
今日だけ と自分に言い訳してしまう始末だ。


…何はともあれ今は奴は夢の中。
行為に疲れたのか、すぴすぴと寝息をたてている。
その寝顔は穏やかだ。


「黙ってるときゃ可愛らしいんだがな」

奴には聞こえてないだろう独り言を溢した。



さて。
コイツが目を覚ましたら、せっかくだし一言祝いの言葉とか言ってみようか。

誰より先に、今日、いの一番に。
『誕生日、おめでとう』
寝顔に向かって声に出さずに言ってみた…けど



あれ…なんだこれ…
結構気恥ずかしい?



憎まれ口叩かれてる時や、床のなかでなら幾らでも何とでも言えるのに、改めて言うとなると…なにやら勝手が違う。


面と向かって…祝いの言葉を…

『めでたい日だな』
…突然じゃイミフだよな。
あ じゃあ
『ハッピーバースデー』
とか…浮わついてるか?


…妙に悩んでたら余計わけわからなくなってきやがった

悶々と考えていると、隣で万事屋が小さく寝惚けた声を出した。

起きるか?


白い睫毛が震えて、その眼がゆっくりと開く。


『コイツに いの一番に――』


時計を見れば日付は変わっていて。
今、万事屋は目を覚まして―

…迷ってる場合じゃねぇな。




「…んぁ 起きてたの? 土方…」
眼を擦る、奴の髪にそっと触れて。

「銀時――」



祝いの言葉を 告げた。




xxx



遅くなりましたが銀時誕生日話。
実はCCのペーパーに漫画で描こうとしてた計画倒れした裏話←
土方サンをヘタレに悩ませたくてこんな感じになりました。
らぶらぶと甘い言葉で祝ってやればいいよとか…



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あきゅろす。
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