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▼Text
○甘日 [土銀]
そういう日だからと
常に糖分過剰摂取な恋人(多分)に
更に糖を与えていいもんかと
ちょっと思考ぐるぐるして


食べてるとこ想像してみたら
あまりに胸が締め付けられたワケで
思わずにやけそうになる口元を必死に抑えて



訪問前に菓子屋に寄ろうと決めた。




    +甘日+




「いらっしゃいませ〜」

いやに愛想のいい女性店員に出迎えられ、ちょっと尻ごむ。
たまには、といつもと違う店を選んでみたワケだが、土方は既に少し後悔していた。
2月半ば。
バレンタインシーズンの名の知れた洋菓子店には、女達の黄色い声が飛び交っている。
最近は女性から男性へのみならず、女性同士チョコレートを贈りあったりするとかで、色とりどりに可愛らしくラッピングされた商品が店頭を飾っていた。
やもすればキラキラと音でもしそうなそれに手を伸ばそうか否かぼやぼやしていると、若い女の子の群れに押しのけられてしまう。


「…はー」

圧倒されるのと感心するのとで言葉になっていない息が漏れた。

こういうトコは男一人で来るのにはかなりの重労働だ、などと土方は今更になって思う。
そして何やら好奇の視線も感じる…当たり前と言えば当たり前かもしれないが。

しかし折角来ているのだ。
何か買っていこうと、チョコレートの並ぶ商品棚から離れ生菓子のショーウィンドーの方へ目を移動した。


「いらっしゃいませ ご注文はお決まりですか?」

ショーウィンドーの向こうの店員が声をかけてくる。
磨かれたガラスケースの中には、たっぷりのクリームやフルーツを使ったケーキやらタルトやらが行儀よく並んでいる。
ちらりと脳裏を掠める銀髪に少しだけ鼓動が速まった。


「あー… コレとコレと…」

指差す品を店員が手際よく箱詰めしていく。

「ありがとうございました〜」

リボンの付いた箱を受け取って、ようやく店を後にした。





ピンポーン


インターホンを鳴らして少し待つ。
裸足の足音が向こうに聞こえて、がらりと戸が開いた。

「どしたの?土方君」
ここ万事屋の主―銀時が小首を傾げる。
「今日行くって連絡しといただろ?」

居留守を使わず出てきたということは、来ることは分かっていたのだろう。
わざと言っているだけと知っている土方は、別段怒る様子もなく万事屋に上がりこんだ。



「今日は何の御用ですか〜?」

ソファに座り脚を組む銀時に、持っていた箱を渡す。

「別に大した用はねぇさ 顔見に来ただけだ」
「…ふぅん」

銀時は適当に相槌をうちながらそれを受け取ると、さっそくリボンを解き箱を開けた。

「お? ケーキ?」
「おぉ」
「食っていい?」
「あ おぉ…」

バレンタインのプレゼントにわざわざ混雑の中足を運んできたのだが。
土方が手土産を持って行くのは珍しい事ではなく、銀時は特別反応を見せる事もなく台所に行ってしまった。

「…言わなきゃ気付かねぇか」

ちょっとがっかりした土方だったが、一応喜んでいる様子を見られたので良しとしておくことにする。
少しして、銀時がお茶の用意をして戻ってきた。

「どれにするかな〜」

そう言って箱の中身をほくほくと覗きこむ。

「どれも甘いのは変わらねぇだろ」
出されたお茶を啜る土方に
「甘いっつっても色々あるだろが」
銀時が小さく膨れる。


ようやく選んだのかラズベリーの乗ったチョコケーキを取り出す。
残りを冷蔵庫へ運び、銀時が土方の隣へ腰掛けた。

柔らかなケーキにフォークを突き立て、小さく掬うと口へ運ぶ。

「ん〜 美味い〜」
ふわふわと笑う銀時を横目で見て
「そーかよ」
少し満足気に土方が言う。


「…―」

土方に近づいた銀時が耳打ちした。

「バレンタイン だからだろ?」

言われて土方がびくりとする。

「…分かってたのかよ」
「だってコレあの有名店のだろ?めっちゃ混んでるっていう」
「…そうだ」
「わざわざその混雑の中行ってきたんだろ?他のもチョコ系のケーキばっかだったし」

ここのオススメはケーキなら生クリームだしな とか無駄な情報も添えた。

「…ホントそーいう事は良く知ってんな」
「万事屋稼業に情報は命だからな〜 コレも美味いけど」

一口掬って土方の口元に運ぶ。

「いいって俺は」
言おうと口を開いた所へケーキを押し込まれ
「ん…」
その上から唇を重ねられた。

「美味いだろ?」
「…あぁ 甘ぇわ」

銀時の口元に付いたチョコクリームを追って土方が口づける。
ちゅ ちゅ と唇を交す音がお互いの耳に届く。


「ん… そろそろ離せって ケーキ乾いちまう」
「テメェから来たんだろ」

土方が唇をぺろりと舐める。
その仕草に銀時の瞳に欲の光が灯った。

「…土方君仕事は?」
「この後な 少しぐれぇ時間あるぜ」
「なら 少しだけ だからな」



でもケーキが先だから とフォークをとる銀時を土方がやれやれと見やった。





xxx




遅れましたがバレンタイン…
甘いのを目指してみたです。
土方さんから渡してみたらどんなかなとか
結局銀さんに読まれてるかなとか。

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あきゅろす。
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