[携帯モード] [URL送信]

▼Text
○夢懺悔 [正白]




    +夢懺悔+




『…チャ…』

…誰だ?

『…チャン』

…なんだか聞いた事のあるような…

『正チャン…』

この…巫戯けた呼び方は…

『正チャン てば』
「う…」

そうだ きっとあの白いふわふわの…

「正―チャン」
「白蘭サン!?」

がばっと起き上がると
ニコニコと僕を覗き込むあの顔。

「よかった 聞こえてたんダ?」
「聞こえ…ってあれ?貴方なんでこんなトコ…」
周りを見渡すと 薄蒼い空間。
地面…というか床には花だけが咲いていた。

「ん ボクの身体は囚われたままだからね 正チャンの夢にやってきたんだ」
「あぁ…って納得していいんですかコレ」
「納得するもしないもココはキミの夢なんだから」
「……」

混乱しそうになったけど、夢なんだから合理的じゃないことが起こるのが当たり前…と無理矢理自分に言い聞かせた。

「…とにかく どうして…」
「正チャンに逢いたかったのさ」
「そんなの…」

変わらない。
大した理由じゃなく貴方は行動するんだ―

そう思った途端、目の奥がカッと熱くなった。

「貴方は!自分が何をしたかわかってるのか!?」
その胸倉を掴み
「貴方の野望だかなんだかのせいで彼女は…アルコバレーノの少女は死んだんだ」
「そうだね 悪いコトしたね」
「綱吉君達だって…急に未来に連れて来られて まだ幼いのにあんな…」
「そうだね」
「貴方が…貴方のっ…」
「キミの技術もそれに加担してくれた」
「……っっ」

言葉に 詰まった。
そうだ。
僕だって…10年バズーカなんかに興味を持たないで、白蘭サンに気付かせさえしなければ…

「…でも 運命はいつか繋がってしまうんンダ それを願っていようがいまいが」
「そんなの…っ」
詭弁だ…未来は幾つだって…
「ヒトがどんなに弄ろうと パラレルワールドが存在しようと 運命は抗うコトは出来ないんだ」
胸倉を掴んだままの僕の手を そっと掴んで
「ユニちゃんだってアルコバレーノの大空である以上 理解していた筈だ」
「…っ」
「正チャンと出会うコトも 運命だったんだ」


そうだ。
10年バズーカの事だって、パラレルワールドへ行っても出会っていたからで。

「ボクは…」
ゆっくりと白蘭サンが話し始めた。
「正チャンに謝りに来たんだ」
「え…?」
顔を上げると いつもどおり笑っているのに、何か悲しげな彼の顔があった。
「せっかくキミと出会えたのに 利用してしまったコト」

目が合った。

「ゴメンね」
「…そんっ…っ」
「アトね」

ふ と眼で笑って

「ありがとう」
「白蘭サン…」
「正チャンと逢えたのは 凄く嬉しかったんだ」

ホントだよ と念押しして

「10年前のキミと出会えて 時空を超えられるのがボクだけじゃないって 方法とかは全然違ったけど」

彼を掴んでいた手はもう力なんて入ってなくて
降ろした僕の手に、白蘭サンはそっと触れた。

「一緒に大学生やってイロイロゲーム作ったりして 幸せだったんだ」
「白蘭サン…」
目の奥の熱さは、目頭からつぅと溢れた。
「ぼっ 僕だって…」

楽しかったのは 嘘じゃない。
貴方と 一緒に居られたのは―

「裏切ったみたいでゴメンね あ でもそれは正チャンとおあいこか」
「…っ 貴方はっ」
巫戯けた物言いが酷く懐かしい。
「フフ すぐ怒るの変わらないなぁ」
傍に居た頃から
「大好きだったよ 正チャン」
「そういう恥ずかしい事を…」
耳が熱くなる。
でも僕も 僕だって。
「大好き…でした 白蘭サン」
触れていた手をぎゅっと握って
そっと キスをした。



「そろそろ ボクはいくよ」
日が上ってきたみたいだから。
「白蘭サンっ…」
僕の手を離し、白蘭サンが立ち上がる。

また逢えるんですか?
ちゃんとご飯食べてるんですか?
言いたいのに 止められた様に声が出ない。

「じゃあネ」
ひらひらと手を振る姿は 変わりなくて。
またね とはいってくれなくて。





「白…蘭 サン」


目を開けたら、見慣れた天井が見えた。
此処は自分の部屋。
うっすら朝日が見える。

やっぱり
少し胃が痛くて
やっぱり
少し泣いていた。

ただの夢だったとしても
それでも―

「白蘭サン…」

一時でも逢えた事は 嬉しかったんだ。

「…じゃあね」





xxx




正チャンと白蘭。
なんか余りに白蘭様に救いが見えなくてあぅぅと…


[次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!